応用地質
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地震による都市域斜面災害
―2011年東北地方太平洋沖地震を例として―
村尾 英彦釜井 俊孝太田 英将
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2013 年 53 巻 6 号 p. 292-301

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抄録

 2011年東北地方太平洋沖地震によって,都市域住宅地における斜面災害が多発した.これらの斜面災害は,主に谷埋め盛土,腹付け盛土の造成地の変動が原因であり,家屋が全壊,半壊する被害に加え,ライフラインが破壊され,深刻な被害が生じている.日本国内の都市域に多数存在する盛土造成地における,今後の地震災害を防ぐことを目的として,42地点の調査結果をもとに,斜面変動のタイプを5つのタイプに分類し,各タイプにおける被害の特徴をまとめた.5つの分類は,タイプ1:谷埋め型盛土の変動,タイプ2:腹付け型盛土の変動,タイプ3:谷埋め型+腹付け型盛土の変動,タイプ4:盛土の崖崩れ,タイプ5:表層すべりである.タイプ5の表層すべりは,今回の地震で明らかとなった被害であり,盛土末端部が液状化することによって,斜面が不安定化するものである.いずれのタイプも,被害は盛土領域内で生じている.また,1978年宮城県沖地震後に施工された,地すべり対策工事の耐震補強としての有効性に関する考察を行った.この考察から,地すべり対策工(杭工,地下水排除工)が,地震時における盛土斜面の大変形に対して効果を発揮することを確認した.一方で,地すべり対策工のみでは,住宅基礎周辺の変形を抑えることができず,今後は,その変動抵抗性を向上させる対策工の考案が必要であることを確認した.加えて盛土土塊内に,土塊を分断するような,強度の大きい領域を作り出し,変動土塊に作用する側部抵抗を増加させることにより,盛土の変動を抑えることが可能であることを確認した.

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© 2013 一般社団法人 日本応用地質学会
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