2015 年 56 巻 5 号 p. 219-229
著者は,重力変形が初生地すべりに至ることにより形成される地形について研究した.対象斜面は地すべりが最も発生しやすい流れ盤(柾目盤)斜面と逆目盤・受け盤斜面である.解析方法は,地質構造解析に用いられるバランス断面法を使用した.それによると,斜面の頭部と末端部に緩斜面が形成されたものは,初生地すべりと認定できる地形と解釈される.さらに,変形した斜面の変位率と傾斜を測定し,初生地すべりに至る変形の度合いや地質により初生地すべりが発生する変位率と斜面の傾斜が異なる傾向を得た.これらの知見を用いると,重力変形斜面での大規模土工の危険性や土工計画あるいは対策方法に関して,地すべり発達段階に応じた評価を示すことができると考える.