2017 年 57 巻 6 号 p. 295-300
本稿では,福岡城の急傾斜の城壁を例に,SfMとGISを用いて地形を効果的に表現する工夫を行ったことを報告する.通常の二次元の地図表現では,垂直に対し水平の延長が小さい急傾斜地の形状を十分に示せない.そこで,城壁に置く基準点3点の座標を,市販の表計算ソフトにより平行および回転移動の計算を経て,原点,X軸,XY平面に乗るものに変換する,基準面変換を考えた.座標変換した基準点を用いて,城壁の変換DEMをSfMにより計算し,それよりGISで地形解析を行った.変換DEMでは,通常の地図表現に比べ積石や隙間の微細な凹凸がよく表現できた.さらに空間フィルタリングを通じて城壁の不自然な形状とその範囲を読み取れた.したがって表計算ソフトによる基準点の移動計算,SfMによる変換DEM計算,GISによる空間フィルタリングを組み合わせる本手法は,急傾斜地に対する地形・地質の課題解決に活用できると考える.