応用地質
Online ISSN : 1884-0973
Print ISSN : 0286-7737
ISSN-L : 0286-7737
報告
山口県中南部,才ヶ峠構造線に関連した活断層露頭
田村 友識金折 裕司
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 58 巻 4 号 p. 290-296

詳細
抄録

山口県中南部においてNE-SW方向の才ヶ峠(さいがたお)構造線(全長約20km)は,三畳-ジュラ紀周防(すおう)変成岩とペルム紀大田層群との地質境界断層として知られてきた.これまで,この構造線に関連した断層変位地形や活断層露頭の記載はされてこなかった.地形・地質調査によって,才ヶ峠構造線の近傍に断層露頭Loc. 1(宇部市長小野)と断層露頭Loc. 2(美祢(みね)市真名)を新たに発見した.断層露頭Loc. 1では,大田層群の泥岩と周防変成岩の泥質片岩の境界に,断層が認められ,この断層は才ヶ峠構造線に該当するが,低位段丘堆積物に変位・変形を与えていない.断層露頭Loc. 2では,大田層群の砂岩ないし泥岩中に断層が認められる.本露頭は,才ヶ峠構造線の40m西側という非常に近い位置に分布し,断層の走向は才ヶ峠構造線と同様のNE-SW走向であることから,才ヶ峠構造線に関連した断層と考えられる.

本露頭において,破砕帯と周囲の母岩の境界面は,中位段丘堆積物(約8.5~9万年前(阿蘇4火山灰堆積時)~13万年前(MIS5eに相当)以降)に変位を与えている.

以上のことから,才ヶ峠構造線は少なくとも,その一部は活断層であり,その最新活動時期は少なくとも後期更新世以降の可能性がある.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本応用地質学会
前の記事
feedback
Top