応用地質
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報告
GPSを用いた大規模地すべり斜面の長期自動変位観測
中里 裕臣井上 敬資紺野 道昭伊藤 吾一佐藤 透
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2018 年 58 巻 6 号 p. 402-407

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抄録

GPSを用いた大規模地すべり斜面の自動変位観測システムとその長期観測結果を紹介する.活動的な地すべりの対策工施工までの動態監視から,対策工施工後の効果判定までの長期にわたる長寿命な観測手法として,GPS観測システムが取り上げられたが,対象ブロックが北向き斜面であったことから,まず手動観測による適用性評価を行った.また,変位観測に対するGPS干渉測位の特性を実験により把握した.GPS観測システムは,不動地の基準点1 箇所と地すべり地内の移動点5 箇所で構成され,2003年10月より連続観測を開始した.各観測点では太陽電池を電源とし,オンライン観測には,当初は各観測点からの携帯電話回線を利用したが,後に野外用無線LAN回線により現地でデータを集約し,インターネット回線を通じて基線解析PCに送る方式とした.本システムにより2004年豪雨時の大きな変位や,その後の排水トンネルを主とする対策工の進展に伴う変位の沈静化を把握することができた.また,上下成分には基準点と移動点の標高差に応じた年周変動が認められ,気象データを用いた対流圏遅延補正の有効性が示された.

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© 2018 一般社団法人 日本応用地質学会
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