2021 年 62 巻 1 号 p. 2-12
地層処分の安全評価などにおいて重要な山地の形成過程を明らかにするための手法の一つとして,後背地解析がある.本研究では,北海道幌延地域に分布する更新統更別(サラベツ)層を事例対象として,電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いた重鉱物の化学組成分析,鉱物種の同定および存在比の計測を同時に行う手法(重鉱物スクリーニング)の後背地解析に対する適用可能性を検証した.分析は16元素を測定対象として行い,得られた化学組成に基づいて鉱物種を判定した.判定結果は,薄片観察の結果と整合的であることが確認された.重鉱物スクリーニング結果に加え,礫種構成分析の結果も踏まえると,更別層の主な後背地は宗谷丘陵と天塩山地であり,少なくとも1.5 Ma以降には宗谷丘陵が陸化していたことが推測された.このような地質構造発達史は,既往研究で示された幌延地域の地質構造発達史とも矛盾しない.一方で,宗谷丘陵や天塩山地では産出の少ない角閃石が更別層の一部から多く確認され,天塩川による運搬などで本地域より離れた所からの砕屑物の供給の影響も考慮する必要がある可能性が考えられた.