応用地質
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論文
非弾性ひずみ回復法を用いた熊本地震震源域における深度700mまでの地震後応力状態の測定
杉本 達洋澁谷 奨林 為人 村田 澄彦
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2021 年 62 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

地震発生のメカニズムを考える上で,その震源域の応力状態は非常に重要なパラメータとなる.本研究では,2016年熊本地震本震の震源断層である布田川断層近傍の掘削孔から採取した,計20個の岩石コア試料に非弾性ひずみ回復法を適用し,そのうち6試料での原位置応力測定に成功した.その結果,布田川断層近傍では鉛直応力が最大主応力(σ1)となる正断層型の応力状態が支配的であることが明らかとなった.これは,地震時の横ずれ型の断層運動により,地震発生前は水平面内にあったと推察される最大主応力(σ1)の値が著しく低下したことを示唆する.地震後の応力状態が正断層型であるという結果は,水圧破砕法や発震機構解を用いて求められた当該地域における応力測定の結果と調和的であった.さらに,最小水平主応力(Shmin)方向は布田川断層の走向とほぼ直交しており,断層面上に横ずれすべりを引き起こす水平せん断応力が小さいことが判明した.

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© 2021 一般社団法人 日本応用地質学会
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