2022 年 63 巻 2 号 p. 42-48
紀伊半島南部では,四万十帯や新第三系の熊野層群に大峯花崗岩類や熊野酸性岩類が貫入しており,特に大峯花崗岩類は周囲の泥質岩の熱変成を引き起こしていると考えられている.泥質岩の熱変成度は,イライトの半値幅で求められるイライト結晶度(IC値)から推定することができる.本研究では,紀伊半島南部の泥質岩の熱変成度と物性の関係を定量的に評価するためIC値,反発硬度と真密度の測定を行った.また,IC値の空間分布から地すべり発生箇所の分布の特徴について考察した.その結果,IC値と反発硬度の関係は,IC値の値が低くなる,すなわち熱変成度が高くなるほど反発硬度が高くなるということが示された.IC値と真密度においても,熱変成度が高くなると真密度も高くなるという関係が示された.さらに,IC値の空間分布から熱変成度の分布パターンを3つに分類することができた.そのうち最も熱変成度の高い地域は大峯花崗岩類の影響を受けていると考えられ,地表に露出していない花崗岩類が伏在している可能性を示した.また,同じ四万十帯の日高川層群で熱変成度の高い地域と低い地域を比較すると,熱変成度の高い地域で地すべり発生箇所が少ない傾向が認められた.