応用地質
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63 巻, 2 号
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論文
  • 細野 日向子, 竹村 貴人, 木村 克己, 菊地 輝行
    2022 年 63 巻 2 号 p. 42-48
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    紀伊半島南部では,四万十帯や新第三系の熊野層群に大峯花崗岩類や熊野酸性岩類が貫入しており,特に大峯花崗岩類は周囲の泥質岩の熱変成を引き起こしていると考えられている.泥質岩の熱変成度は,イライトの半値幅で求められるイライト結晶度(IC値)から推定することができる.本研究では,紀伊半島南部の泥質岩の熱変成度と物性の関係を定量的に評価するためIC値,反発硬度と真密度の測定を行った.また,IC値の空間分布から地すべり発生箇所の分布の特徴について考察した.その結果,IC値と反発硬度の関係は,IC値の値が低くなる,すなわち熱変成度が高くなるほど反発硬度が高くなるということが示された.IC値と真密度においても,熱変成度が高くなると真密度も高くなるという関係が示された.さらに,IC値の空間分布から熱変成度の分布パターンを3つに分類することができた.そのうち最も熱変成度の高い地域は大峯花崗岩類の影響を受けていると考えられ,地表に露出していない花崗岩類が伏在している可能性を示した.また,同じ四万十帯の日高川層群で熱変成度の高い地域と低い地域を比較すると,熱変成度の高い地域で地すべり発生箇所が少ない傾向が認められた.

報告
  • 重光 勇太朗, 石塚 師也, 林 為人
    2022 年 63 巻 2 号 p. 49-63
    発行日: 2022/06/10
    公開日: 2022/12/26
    ジャーナル フリー

    干渉SAR時系列解析は年単位での地表変動傾向を明らかにするのに有効な手法である.本研究では,2018年に発生した大阪北部地震の震源付近の断層である有馬―高槻断層帯,及び六甲山活動セグメント近傍における地震前後を含む近年の地表変動傾向を明らかにするためにPS干渉SAR解析を用いることによって当地域における地表変動量を検出した.その結果,(i)六甲山活動セグメント近傍における沈降方向の地表変動,(ii)箕面GNSS観測点付近及び,有馬―高槻断層帯及び六甲山活動セグメントの間に位置するくさび型のエリアにおいて地表変動が地震後に隆起方向に変化し,その地表変動が地下水位の変動によるものであると示唆されること,(ⅲ)生駒断層と上町断層の間の広域において隆起と考えられる地表変動の要因が地下水位の変動による可能性,また(ⅳ)震源断層のすべりによる西向き方向の震央周辺の地表変動の可能性を示した.さらに,本研究のPS干渉SAR解析結果の妥当性がGNSSの結果及び先行研究との比較によって示された.断層周辺部における地表変動のメカニズムを解明するために,今後も継続的に同エリアにおける干渉SAR時系列解析を用いた地表変動の解析を行う必要がある.

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