2023 年 64 巻 3 号 p. 112-123
極微量の測定が可能な水銀は,地下深部の高温環境下で高い揮発性があり,移動して地表で水銀分散ハローを形成するため金属探鉱や地熱調査では水銀を指標とした多くの報告事例がある.水銀探査は土壌水銀量(液相と固相の水銀および水銀化合物)と水銀蒸気量(気相の水銀)を対象としている.土壌の液相の水銀と水銀蒸気濃度との関係は温度依存したヘンリーの法則による気液平衡が成立していると報告されている.
水銀分散ハローマップの作成に際し,水銀蒸気濃度の変動要因を考慮する必要があり,その要因として,温度や日照の他,土壌の乾燥後の降雨による湿潤化で地表の水銀蒸気濃度が上昇することが報告されていた.しかし既往の研究では水銀分散ハローマップ作成の際に土壌の乾燥-湿潤過程における水銀の揮散が考慮されていなかった.野外において降雨前後の測定を行ったところ,乾燥時の平均で18倍となる結果が得られ.乾燥後の加水の影響が極めて大きいことが判明した.この結果を受け室内試験によって乾燥後の加水による水銀の変動の様子を把握した.本論ではこれらの室内外の試験の結果および考察を報告する.
水銀探査法の高性能化により,本手法の再評価を望みたい.