応用地質
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64 巻, 3 号
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論文
  • 西山 成哲, 川村 淳, 梅田 浩司, 丹羽 正和
    2023 年 64 巻 3 号 p. 98-111
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/10/03
    ジャーナル 認証あり

    火山防災におけるリスク評価や高レベル放射性廃棄物の地層処分に係るサイト選定および安全評価を行う上で,マグマの移動経路であった山体下の岩脈の分布に関する研究事例を蓄積していくことは重要である.火山地形は,火山活動に伴うマグマの貫入位置やその履歴を表していると考えられている.本研究では,GISを用いた地形解析により火山を構成する等高線の分布,重心,面積から,放射状岩脈の卓越方位の把握および火道の安定性評価を試みた.地形解析の結果,火道安定型の火山に対して岩脈の卓越方位を示すことができた.一方で,火道不安定型の火山は,本解析による岩脈の卓越方位の把握には適さず,その適用範囲が火道の安定性に依存すると考えられた.火道の安定性は,等高線ポリゴンの面積データを用いた解析を行うことで評価が可能であり,岩脈の卓越方位の把握手法への適用範囲を示すことができる.このことから,火山の活動履歴が詳らかになっていない火山についても,火道の安定性について評価が可能であり,地形解析はそのツールとして有用である.今後,本研究による地形解析が,火山の活動履歴を明らかにするための新たな手法となることが期待される.

  • 板井 秀典, 野田 徹郎
    2023 年 64 巻 3 号 p. 112-123
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/10/03
    ジャーナル 認証あり

    極微量の測定が可能な水銀は,地下深部の高温環境下で高い揮発性があり,移動して地表で水銀分散ハローを形成するため金属探鉱や地熱調査では水銀を指標とした多くの報告事例がある.水銀探査は土壌水銀量(液相と固相の水銀および水銀化合物)と水銀蒸気量(気相の水銀)を対象としている.土壌の液相の水銀と水銀蒸気濃度との関係は温度依存したヘンリーの法則による気液平衡が成立していると報告されている.

    水銀分散ハローマップの作成に際し,水銀蒸気濃度の変動要因を考慮する必要があり,その要因として,温度や日照の他,土壌の乾燥後の降雨による湿潤化で地表の水銀蒸気濃度が上昇することが報告されていた.しかし既往の研究では水銀分散ハローマップ作成の際に土壌の乾燥-湿潤過程における水銀の揮散が考慮されていなかった.野外において降雨前後の測定を行ったところ,乾燥時の平均で18倍となる結果が得られ.乾燥後の加水の影響が極めて大きいことが判明した.この結果を受け室内試験によって乾燥後の加水による水銀の変動の様子を把握した.本論ではこれらの室内外の試験の結果および考察を報告する.

    水銀探査法の高性能化により,本手法の再評価を望みたい.

報告
  • ―大規模地すべり地の活動状況調査の事例―
    足立 勝治, 中曽根 茂樹, 小野田 敏, 佐藤 昌人
    2023 年 64 巻 3 号 p. 124-135
    発行日: 2023/08/10
    公開日: 2023/10/03
    ジャーナル 認証あり

    山地の集団移動地形である大規模地すべり地を対象に6時期の空中写真判読を実施して,地すべりの微地形について時系列変化を把握した.空中写真は,1947年,1957年,1974年,1983年,2004年,2014年を使用した.地すべり地形の抽出は5 mDEMから作成した赤色立体地図を使用した.各種の微地形の経年変化を,時間的スケール70年程度の期間で活動状況を推定した「地すべりブロック活動推移状況図」に整理して応用地形学図試案を作成した.空中写真判読で各種の微地形の新しさを,地肌や小地すべりブロック,崩壊地,亀裂等の新たな出現を前時期の空中写真と比較・分析して変化を抽出した.本手法は,大規模地すべり地で進行する緩慢な変動や尖端部などの局所的な変位の発生の追跡に有効であることが確認できた.今後は,集団移動地形の各種の微地形について,多時期の空中写真判読にLiDAR-DEMの活用を併せた手法で適用事例を増やすとともに応用地形学図の凡例づくりが課題である.

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