1999 年 40 巻 5 号 p. 316-321
平成11年6月29日に広島県の広島市と呉市において, 長雨に引き続いた豪雨によって土砂災害が発生し, 30余名の住民が死亡した. これらの被害のほとんどは, 住宅地に近接した起伏地斜面のがけ崩れと土石流によるものであり, 風化した花崗岩類の分布する地域で発生した.
崩壊層は透水性の高い花崗岩起源の崖錐および風化土 (まさ) からなり, 崩壊底盤には軟岩が露出している場合が多い. 約1週間にわたる先行降雨に続いての集中豪雨は, 表層の高透水帯を一気に飽和させて崩壊に至ったものと考えられる. このたびの土砂災害は, このような地層の透水性, 著しい不連続性を素因とし, 降雨を誘因として発生したものと考えられる.