応用地質
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40 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 木方 建造, 大山 隆弘, 馬原 保典
    1999 年40 巻5 号 p. 260-269
    発行日: 1999/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    第三紀の堆積岩地盤の詳細な水理地質構造を把握するためには, その基礎データとしての地質・水理・地化学特性の評価が不可欠とる. このうち地下水の地化学的な特性評価をするためには原位置からの地下水採取・分析もさることながら, 岩石の間隙水の採取・分が有力な手段となる. このような観点から, 堆積性軟岩の間隙水を抽出する装置を製作し, 大深度ボーリングにより掘削された主として第四紀~新第三紀の堆積岩のコア試料に本装置を適用し, コア間隙水を抽出した.
    ボーリング掘削泥水のコアに対する影響評価を, 掘削水にトレーサ物質を投入することによって実施した. その結果, 掘削水の影響は浅部の砂質岩で10%程度, 深部の泥岩では0%であることを明らかにできた.
    各深度の試料の水質分析や同位体分析の結果, 間隙水は深部に従って, Na+とHCO-3に富み, 酸素同位体比が軽くなることが明らかとなった. この間隙水の水質は, 方解石の溶解および粘土鉱物のイオン交換反応により形成されたと推察された. また, 風化による長石からカオリナイトの生成に伴う酸素・水素同位体分別により, 同位体のマイナス側へのシフトが説明できた.
  • 木谷 日出男, 太田 岳洋
    1999 年40 巻5 号 p. 270-280
    発行日: 1999/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    砂質土地山でのトンネル掘削の最も重大な問題に, 湧水に伴う切羽の流出や崩壊の発生がある. 筆者らは, その発生の有無を評価するとを目的とする地下水の浸透力と地山の強度の関係をモデル化した基礎的な実験を行った. この実験は, トンネルを模擬した水平方向の浸透実験であり, 試料の崩壊時の動水勾配にあたる限界動水勾配を求めるものである.
    本論では, 実際に施工中に切羽流出が発したトンネル位置で採取した試料を用い, 同実験手法を適用した結果と切羽状況を対比し, その結果から砂質土地山での切羽状態の評価法としての妥当性について考察した. その結果は次のとおりである.
    (1) 不撹乱試料を用いた実験結果は, トンネル掘削時の切羽の状態をよく説明し得る.
    (2) 現場での撹乱状態の試料を用いた実験結果は, 細粒分含有率をパラメータとして, 限界動水勾配と相対密度の間の基本的関係は指関数の回帰曲線で精度よく表される. この指数関数曲線を浸透崩壊特性曲線と称す. トンネル切羽の自立性は各土試料の特性曲線を比較することにより相対的に評価し得る.
    これらの結果と適用条件に関する検討結果から, 本手法は砂質土を対象としたトンネル切羽の自立性評価試験法として有効であるという結論を得た.
  • 男鹿半島, 女川層堆積岩の例
    木村 進一, 鹿園 直建, 野原 昌人, 岩井 修平
    1999 年40 巻5 号 p. 281-294
    発行日: 1999/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    酸化的環境下における堆積岩中の微量・希土類元素の挙動を知ることを目的とし, 中新統女川層の頁岩, 珪質頁岩の化学的風化に伴う鉱物学的, 地球化学的変動について検討を行った.
    新鮮岩石の黄鉄鉱は風化岩石において消失し, 水酸化鉄が生成される. 全岩中のP, Mn, Co, Ni, Cu, Mo, Pb, U, REEs含有量は, 新鮮岩石と風化岩石とで著しい組成の相違が認められる. 風化岩石におけるP, V, Mo, Cr, Pb, U, REEsの減少率Fe2O3*付加率が多い試料ほど少なくなる傾向が認められ, このことは風化により溶脱された微量・希土類元素は水酸化鉄に吸着され, 再び岩石に濃集することを示すのだろう.
    ただし, 頁岩と珪質頁岩とでは, 水酸化鉄による溶脱元素の吸着率に相違が認められる. 頁岩風化岩石の水酸化鉄の元素吸着率は珪質頁岩におけるものより全般的に少ない. 頁岩と珪質頁岩の鉱物組成を基に考察すると, 黄鉄鉱に富む頁岩においては, 珪質頁岩より低いpH条件で風化が進行したため, 溶存化学種と水酸化鉄の電荷的性質が変化し, それほど元素は有効に水酸化鉄に吸着されなかったと推察される.
  • 今野 誠, 坪松 学, 星野 佳久
    1999 年40 巻5 号 p. 295-298
    発行日: 1999/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    土中の水分量を測定するには, 一般に電気乾燥炉や中性子水分計を用いて測定されている. 乾燥炉を使用する方法では, 試料を大量にう場合には時間がかかる. 中性子水分計では比較的早く結果を知ることができるが法律の規制を受けるので一長一短である. これらに対し, 宇宙線のμ粒子を使用することにより人工放射線と違って法律による規制を受ける必要がなく, ほぼ安定したエネルギーを自然界から受けることができる. μ粒子を利用する検出管を試作して土中の水分量を測定した. その結果, 電気乾燥炉で測定した値と比べ, 誤差2.8%の精度で含水比を推定することができた. μ粒子の利用による土中水分の測定は, きわめて有効な測定方法であることが実証された.
  • 林 為人, 高橋 学, 李 小春, 鈴木 清史
    1999 年40 巻5 号 p. 299-305
    発行日: 1999/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    難透水性岩石の透水係数を測定する場合, 供試体を流れる水が極微量であるため, 供試体と被覆材料との間を流れる側面流が発生しないことが正確な透水係数を得る前提条件となる. 本研究では, 3種類の異なる方法で被覆を施した白浜砂岩供試体を用いて, トランジェントパルス法透水試験を実施した. その結果, 熱収縮チューブのみによる被覆の場合は側面流が発生し, 透水係数の過大評価を招く恐れがあることが明らかになった. 側面流を防ぐ対策として, 熱収縮チューブを被せる前に, 低粘性シリコンゴムを供試体表面に塗布することによって, 側面流の発生を防げることが判明した.
    次に, 本研究での実験条件において, 発生した側面流の流量および, 側面流の水みちを円筒形キャピラリーと等価した場合の等価キャピラリー半径を定量的に評価した. 等価半径0.01mmほどの側面流水みちは透水試験結果に影響を及ぼすことが明らかになった. さら, 弾性論に基づいて被覆材料の封圧伝達特性を検討した結果, 岩石供試体の弾性係数が被覆材料のそれ以上あれば, 被覆材料は封圧をほぼ忠実に供試体に伝達できることが判明した.
  • 稲垣 秀輝
    1999 年40 巻5 号 p. 306-315
    発行日: 1999/12/10
    公開日: 2010/03/25
    ジャーナル フリー
    1998年8月台風4号の接近に伴う豪雨が福島県南部~栃木県北部に集中した. この豪雨で多くの斜面表層崩壊が認められた. これらの崩壊は侵食前線より下方の急斜面で多発しているとともに, 地下水や表流水の集中しやすい地形・地質条件で生じている. この表層崩壊は厚さ1m未満の根系を含む表土だけの崩壊で, 崩壊面には割れ目のほとんどない低溶結火砕流堆積物が露出しており, 根系の付着は全く認められないことを特徴としている. ここでは, 根系層だけからなるこのような表層崩壊をその崩壊形態から 「根系層崩壊」 と呼, その崩壊状況を説明するとともに, 斜面崩壊に対する植生の根系の防災効果について述べる.
    調査は, 空中写真による地形解析, 地表地質踏査および簡易貫入試験による地盤調査により行った. 調査の結果, 根系層崩壊の特徴は以下のとおりまとめられる. (1) 崩壊厚さが1m未満ときわめて薄いこと, (2) 斜面傾斜が40°前後と急であること, (3) 表流水や地下水が集まりやすい地形・地質で生じること, (4) 根系のある表層の直下に岩盤が分布し, Nc値が2以下から50以上に急変すること, (5) 表層直下の岩盤に根系が入り込む割れ目がないこと, (6) 崩土内の立木が立ったままで崩土全体が速い速度で流下する等である.
  • 花崗岩地域における土砂災害
    三浦 清, 阿南 修司, 藤本 睦, 新見 健, 植田 哲司, 岡村 護
    1999 年40 巻5 号 p. 316-321
    発行日: 1999/12/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    平成11年6月29日に広島県の広島市と呉市において, 長雨に引き続いた豪雨によって土砂災害が発生し, 30余名の住民が死亡した. これらの被害のほとんどは, 住宅地に近接した起伏地斜面のがけ崩れと土石流によるものであり, 風化した花崗岩類の分布する地域で発生した.
    崩壊層は透水性の高い花崗岩起源の崖錐および風化土 (まさ) からなり, 崩壊底盤には軟岩が露出している場合が多い. 約1週間にわたる先行降雨に続いての集中豪雨は, 表層の高透水帯を一気に飽和させて崩壊に至ったものと考えられる. このたびの土砂災害は, このような地層の透水性, 著しい不連続性を素因とし, 降雨を誘因として発生したものと考えられる.
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