2023 年 79 巻 25 号 論文ID: 23-25030
亜熱帯性気候である奄美大島の河川において,流下微粒状有機物(SFPOM)の生産経路は未だ不明な点が多い.そこで本研究では,炭素・窒素安定同位体比を用いて河川内のSFPOMの起源と生産経路を推定することを目的とした.アマミノクロウサギの生息地域では,SFPOMに対する糞の寄与率が39%を示した.また,付着藻類量が多い地点でリュウキュウアユの個体数密度も高まったが,SFPOM中の藻類現存量は0.5mgL-1に留まり,リュウキュウアユの個体数密度とSFPOM中の藻類現存量との間には有意な相関関係が認められなかった.本研究の結果から,河川生態系内においてアマミノクロウサギは陸上有機物をSFPOM起源物質へ変換して供給する役割を担っていることが示唆された.また,リュウキュウアユは藻類由来SFPOMの生産に対する寄与が現状では低いことが示唆された.