2000 年 41 巻 3 号 p. 150-154_2
有珠山は, 2000年3月31日, 北西山麓からマグマ水蒸気爆発を起こした. 火口が住民の生活圏や主要交通路に近接していたこと, 噴火に伴う地殻変動が顕著であったため, 噴火の規模が比較的小さかったにもかかわらず, 住民の避難生活は長期化し, 周辺市町村に大きな被害を与えている. 火山活動は噴石や火口からの泥流の流下など, 噴火による直接的な被害のほか, 火口周辺のドーム隆起とそれに伴う山麓部の圧縮・横ずれなどの地盤変形をもたらした. このため, 火口周辺から山麓にかけての高速道路, 国道をはじめとする道路施設や, 上・下水道などのライフライン, 河川施設, 工場や住家などの建物が被害を受けている. 一方, 今回の噴火では, 地震活動, 地殻変動の観測から, 噴火が山体北西部から発生する可能性の高いことが噴火直前に予測され, ハザードマップに基づく住民の避難が速やかに行われたため, これまでに一人の犠牲者も出さずに至っている. 今回の噴火は, 適切なハザードマップが作られ, 十分に活用されれば, 有効な減災が行い得ることを示した.