応用地質
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オムニスケープジオロジー
ネパールと四国の比較
吉川 宏一大野 博之稲垣 秀輝平田 夏実
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2003 年 44 巻 1 号 p. 14-24

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抄録

近年, ある一つの学問分野の域を超え, 各種の学問を総合的に捉えることで, 環境や防災に役立てようという動きが盛んになってきている. その中で, 景観地質という研究領域も提唱されてきているが, この研究方法は十分に確立されているわけではない.
ここでは, ネパールの山岳部を例に取り上げて景観地質学的な検討を行った結果, 以下のことが示された.
(1) 渓谷部や棚田の景観は, フラクタル解析の結果, 日本の四国の景観に類似している.
(2) ネパールと日本との間には, 地形・地質学的, 気候的な類似点が多く, その結果として両国地域の景観は類似したものとなる.
(3) 両国地域の類似性から, 日本で問題となったような環境や災害の問題がネパールの山岳地域でも起きる可能性が考えられる. 棚田の荒廃による生物多様性の低下と洪水防止能力の低下がそれである.
(4) 渓谷景観の類似性は, 現時点でも, 四国と同じような崩壊・地すべりなどの斜面災害をもたらしているが, 経済的な問題等によって十分な対策がとられているわけではない.
(5) 景観地質学的な観点で対象とする地域を捉えることは, 既に環境や防災上の問題を起こした類似の地域との比較により, 事前対策等の策定に寄与する.

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© 日本応用地質学会
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