応用地質
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1999年広島豪雨による斜面崩壊と斜面地形との関係
観音台地区を例として
黒木 貴一長谷川 裕之
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2003 年 44 巻 2 号 p. 84-93

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抄録

広島市佐伯区観音台地区のA谷に発生した斜面崩壊を対象に, 地形的および地質的な分析を行い, 丘陵地斜面の発達と斜面崩壊との関係を議論した.
A谷の丘陵地斜面における斜面崩壊の形態と地形の分布は, 斜面の位置による基盤岩の風化過程の相違と基盤岩の持つ4つの節理系に支配されている.
A谷の斜面崩壊は, 崩壊発生位置と崩壊地の形態や表層地質の違いにより谷頭凹地で生じた上部崩壊と, 下部谷壁斜面で生じた下部崩壊とに分けられる. 両崩壊は, A谷の斜面にある2本の遷急線の形成と関係づけられる. また両崩壊はその発生メカニズムがそれぞれ異なっている. 上部崩壊は, 新鮮な基盤岩上の角礫層にパイピング現象が生じたために起こった. 下部崩壊は, 風化した基盤岩上の土層が水に飽和し荷重が増加したことにより斜面の安定度が低下したために起こった.
旧崩壊地の位置と形態から, これら2つの型の斜面崩壊は, これまでもA谷では繰り返し生じていることが推定される.

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