応用地質
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44 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 観音台地区を例として
    黒木 貴一, 長谷川 裕之
    2003 年 44 巻 2 号 p. 84-93
    発行日: 2003/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    広島市佐伯区観音台地区のA谷に発生した斜面崩壊を対象に, 地形的および地質的な分析を行い, 丘陵地斜面の発達と斜面崩壊との関係を議論した.
    A谷の丘陵地斜面における斜面崩壊の形態と地形の分布は, 斜面の位置による基盤岩の風化過程の相違と基盤岩の持つ4つの節理系に支配されている.
    A谷の斜面崩壊は, 崩壊発生位置と崩壊地の形態や表層地質の違いにより谷頭凹地で生じた上部崩壊と, 下部谷壁斜面で生じた下部崩壊とに分けられる. 両崩壊は, A谷の斜面にある2本の遷急線の形成と関係づけられる. また両崩壊はその発生メカニズムがそれぞれ異なっている. 上部崩壊は, 新鮮な基盤岩上の角礫層にパイピング現象が生じたために起こった. 下部崩壊は, 風化した基盤岩上の土層が水に飽和し荷重が増加したことにより斜面の安定度が低下したために起こった.
    旧崩壊地の位置と形態から, これら2つの型の斜面崩壊は, これまでもA谷では繰り返し生じていることが推定される.
  • 小嶋 啓介, 山中 浩明
    2003 年 44 巻 2 号 p. 94-103
    発行日: 2003/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    地域の地震被害予測に際し, 対象領域のS波速度, Q値, 層厚および密度などの構造を的確に評価することは最重要項目の一つである. 本研究では, はじめに福井大学の鉛直アレイ, ならびに福井平野の東西軸に沿って展開した地震計によって観測された強震記録の周波数特性ならびにH/Vスペクトル特性を提示し, その地盤条件との関連を検討した. ついで, 観測地震動と対応する重複反射法による計算値を周波数領域で比較し, 両者の誤差自乗和を最小化することにより, 観測点直下の層厚およびQ値を推定する逆解析手法を定式化した. 本手法を, 福井地域で得られた多数の地震観測記録に適用し, 福井平野の東西方向断面の地下構造を推定するとともに, 弾性波探査結果などと比較・検討した. 推定された地盤構造によって, 観測地震動が精度良く再現しうること, 推定された福井平野の地盤構造は, 既存の資料と矛盾が少ないことなどを確認した. 提案する地盤構造推定手法を, 強震動観測点に順次適用するとともに, 既存資料および微動観測などを補間情報として活用することにより, 地域の3次元的な地盤構造を, 比較的高精度で推定できる可能性があり, 地震被害予測の精度の向上が期待できるものと考えられる.
  • 国指定天然記念物スイゼンジノリの自生環境保護を対象として
    荒牧 昭二郎, 金子 好雄, 市川 勉, 岡本 智伸, 椛田 聖孝
    2003 年 44 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2003/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    近年, 自生スイゼンジノリが都市開発に伴う湧水量の減少と水質の悪化により絶滅の危機に直面している. この研究は, 電気探査による比抵抗映像解析や地盤情報データベースを用いた地層区分図, 湧水量や水質を調べ, 天然記念物スイゼンジノリ環境保護の基礎データを得るための総合的研究である. 調査の結果, 江津湖の1日の湧水量は約40万m3であり, 湧水量は7年間で10%程度減少していること, 江津湖の湧水は最上部の水脈と砥川溶岩上部と下部の3つの地下水脈が存在すること, 砥川溶岩中の地下水とその上の地下水は江津湖付近で一緒になり水質が混在していること, スイゼンジノリ自生地の水質は他の湧水池に比べてアルミニウムが少なく清純であり, その地下水は砥川溶岩の下の地下水から供給されている可能性が高いことがわかった.
  • 亀井 健史, 田中 政典, 小山 基史
    2003 年 44 巻 2 号 p. 112-118
    発行日: 2003/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    粘土の強度特性に及ぼす年代効果の影響を検討するため, 残留有効応力試験, 一軸圧縮試験および直接せん断試験を韓国釜山市において採取した不攪乱および練り返し再圧密粘土に対して行った.
    その結果, 一軸圧縮強さ, せん断強さは, 不攪乱試料が練り返し再圧密試料よりもかなり大きな値を示すことを定量的に示唆した. このことは, 不攪乱試料の土粒子構造が年代効果によって発達した構造になっているが, 練り返し再圧密試料の場合には土粒子構造が再構成されているため, 年代効果の影響が消失していることに起因していることによるものと考えられる. 一方, 一軸圧縮試験を行う前に残留有効応力を計測した結果によれば, 供試体の残留有効応力は不攪乱試料が, 練り返し試料の場合と比較して大きな値が得られ, それらの値と強度特性には, 良い対応関係が認められた. このことより, 地盤の安定解析に用いられる一軸圧縮強さの評価等で問題となる試料のサンプリングに伴う乱れによる強度低下の影響を評価する場合に, 一軸圧縮試験前に供試体の残留有効応力を計測することが有効であることを指摘している.
  • 亀井 健史
    2003 年 44 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 2003/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    自然地盤の力学的挙動を再現するためには, 原位置での土要素の異方応力状態を正確に再現したK0圧密状態からのせん断試験を行う必要がある. しかしながら, 実務では三軸試験装置の機能, 試験者の技術, コスト, 試験時間の制約等から等方圧密条件下で実施される場合が多い.
    本研究では, K0圧密終了時の応力状態に至るまでの圧密過程において, 特殊な試験システム装置が必要な精度の高いK0圧密三軸試験をまず行い, 一方実務のことを考慮した通常の三軸試験装置を応用した簡便な二種類の応力径路を変化させた異方圧密三軸試験結果を実施した. その結果, それら異なる三種類の応力履歴を受けた異方圧密粘性土の非排水せん断特性に有意な差は認められなかった. このことより, 本研究で行った異方圧密試験方法は, 簡単かつ経済的な面から実務に有意であることが示唆された.
  • 応用地形学研究小委員会
    2003 年 44 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2003/06/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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