抄録
岩盤崩壊は重大な自然災害の1つであり, 豊浜トンネルなどでの岩盤崩落事故に代表されるようにその被害は甚大かつ深刻な影響を与えることがある. そのため岩盤崩壊のハザードマップ作成に向けて到達範囲を的確かつ効果的に把握することは極めて重要である. 本研究では岩盤崩壊の到達範囲として, 見通し仰角と飛散角を取り上げ, 到達範囲に影響する因子およびその寄与度合いについて, 多変量解析の1つである数量化理論I類を適用し, 検討を行うとともに, 到達範囲の確率的予測の可能性について考察を行った.
その結果, 見通し仰角には崩壊の規模と崩壊形態の影響が大きく, 崩壊斜面下部の状況の違いによる影響は比較的小さいことが判明した. また飛散角には崩壊高さおよび崩壊幅の影響が大きいことが判明した. 数量化理論から導かれた見通し仰角および飛散角の予測式を用いると, 決定係数がいずれも0.55程度で比較的良い精度で到達範囲の予測が可能となった. また到達範囲の実測値と予測値の残差から到達確率分布を求めることにより, 確率的に幅を持たせた到達範囲の予測の検討を行った. これらの定量的な到達範囲予測は岩盤崩壊におけるGISハザードマップを作成する上で今後, 極めて有効な資料となるであろう.