2004 年 45 巻 3 号 p. 125-134
堆積岩地域の水理地質構造を把握するうえで, 断層あるいはキャップロック構造等の水理的不連続構造の水理特性は重要な要素である. 水理地質モデルの確実性はデータの量に依存するが, 実際には, 調査初期段階の数少ないデータから水理地質構造の概要モデルを作成し, 調査データの増加に従い, 細部の更新等を行うことが望ましい. したがって, 最小限のデータから水理特性を把握する手段を持つことが必要とされる.
本論では, 間隙水圧モニタリングやボーリング掘削時の孔内水位変化, あるいは揚水試験における平衡水位等で得られる間隙水圧分布に注目し, 核燃料サイクル開発機構幌延深地層研究センター周辺地域を対象として, 間隙水圧分布データを観測データとして用いた逆解析手法の適用性の検討を行った. その結果, 幌延地域において特徴的な間隙水圧分布を再現するためには, 代替モデルとして, 従来の水理地質構造モデルでは考慮されていないキャップロックの存在を考慮することが有効であること, より深部のデ-タを得ることによって, 近傍に存在する断層の水理地質構造を推定できる可能性があるという知見が得られ, 間隙水圧のみを観測値として用いた逆解析は, 水理地質構造を定量的に把握する第一段階としては有効であることが示された.