応用地質
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2003年九州豪雨による太宰府市原川流域の斜面崩壊と谷壁斜面の地形・地質的特性
黒木 貴一磯 望後藤 健介
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2007 年 48 巻 4 号 p. 170-179

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抄録

2003年九州豪雨により太宰府市では多数の斜面崩壊が生じた. 斜面崩壊の発生した原川流域の斜面Aに対し, 基盤岩の節理と地形との関係, 土層のクリープと地形との関係, 土層と斜面崩壊との関係を議論した.
基盤岩にはE-W走向の南向き緩傾斜の節理A, N-S走向のほぼ垂直な節理B, ENE-WSW走向の北向き急傾斜の節理Cがある. これらの節理が谷壁斜面の形態や分布に影響を及ぼしている. また, 基盤岩は節理の影響を受けた階段状, 谷状, 鍋底状の形状を持ち, 気候環境を反映した埋没遷急線も見られる. 土層のクリープは地表の遷急線の下方では大きいが, その大きさは基盤深度の急変や埋没遷急線にも影響され変化する. クリープの結果, 土層は谷底付近に達し, 浅い凹型斜面と平坦地を構成する. 斜面Aの斜面崩壊は, 浅い凹型斜面と平坦地で角礫状風化部やマサよりも上位にあるクリープした土層が浸透水により不安定化し生じた.
節理は基盤岩の形状のみならず, 斜面崩壊にかかわる土層の発達や地形の形成過程にも影響を与えている. したがって, 地形調査とともに土層, 樹木, 基盤岩の節理の調査を斜面に対し実施することで, 斜面崩壊の発生場所の予測精度が向上するものと思われる.

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