スポーツ教育学研究
Online ISSN : 1884-5096
Print ISSN : 0911-8845
ISSN-L : 0911-8845
背面跳び (走り高跳び) 学習の小学校段階への導入の是非について -はさみ跳びによる学習成果との比較から-
後藤 幸弘原田 耕造
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 16 巻 1 号 p. 25-37

詳細
抄録

本研究では, まず, 「はさみ跳び」学習の経験のある小学校6年生の男女児童, 計30名に, セーフティマット (厚さ50cm) を使用した走り高跳び遊びを3日間行わせ, 「背面跳び」が自然的に発生するかを追跡した。次いで, 児童は「背面跳び」を学習したいと思っているか等を, 3府県にある4つの小学校5・6年生男女児童, 計414名を対象としてアンケート調査した。さらに, 走り高跳びの授業経験の無い小学校5・6年生, 計144名 (男子: 70名, 女子: 74名) を対象に, 「はさみ跳び」(7時間) から「背面跳び」(6時間) まで発展させて指導する群と, 「はさみ跳び」のみを13時間指導する群を設定し, 技能と情意の側面から学習効果を比較した。
すなわち, 1つの調査と2つの実験を設定し, 競技場面で最も高いパフォーマンスの得られている「背面跳び」教材の小学校段階への導入の是非を検討した。
(1) セーフティマットを用いた走り高跳び遊びにおいて, 「背面跳び」が自然的にみられるようになることが認められた。このことは, 「はさみ跳び」と「背面跳び」に技術と学習の系統性のあること, また, 「背面跳び」は児童の発達特性にも合致していること, を示していると考えられた。
(2) 「背面跳び」を指導することは, 児童の学習欲求や高く跳んでみたいという欲求に合致することが認められた。
(3) 「はさみ跳び」のみの指導では, 「助走の勢いを生かして高く跳ぶ」という走り高跳びの技能特性に触れたと考えられるHJS指数の学級平均値を80点以上に高めることはできなかった。
(4) 「背面跳び」まで指導した場合, HJS指数の学級平均値を87.7点に高めることができ, 技能特性に触れさせやすいことが認められるとともに, 走り高跳びを好きにさせ, 体育の授業に対する愛好的態度も高め得ることが認められた。
(5) 上記 (1)-(4) の結果は, 「背面跳び」の学習が, 児童の発達段階の上からも無理のないことを示唆し, 小学校段階においても「背面跳び」まで発展させて指導することは是と考えられた。

著者関連情報
© 日本スポーツ教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top