抄録
人工血管による末梢バイパス術では, 人工血管と動脈との間に伸展性のミスマッチが生じるため, 遠隔期の吻合部内膜肥厚につながりうる. そこで末梢吻合部におけるグラフトと動脈の間の伸展性のミスマッチを是正する目的で, Miller cuffやLinton patchなどの静脈パッチ形成術が施行されることがある. 本症例は浅大腿動脈-後脛骨動脈バイパス術を施行した重症下肢虚血の1例である. 初回手術で同側の大伏在静脈の中枢側を使用しており使用できる静脈長が限られているうえ, 静脈径が2mmと細径であった. 中枢吻合部である浅大腿動脈は全周性の石灰化があり, 吻合部において良好な視野を確保するために10mmほどの切開を置いたところ, グラフト径に比して吻合部が相対的に大きくなったため, 形状の良い吻合部を作成する目的でLinton patch形成術を施行した. 使用可能なグラフト長やグラフト径に制限がある場合, 中枢吻合部に対するLinton patch形成術は有用な手術手技である可能性が示唆されたため, 文献的考察を加えて報告する.