日本フットケア・足病医学会誌
Online ISSN : 2435-4783
Print ISSN : 2435-4775
3 巻, 1 号
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―特集― 下肢救済 -在宅とつながるために-
  • 石橋 理津子, 上村 哲司
    2022 年 3 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
     WHO (世界保健機関) と国連の定義では, 高齢化率が7%以上で高齢化社会と言われているが日本においては2018年に高齢化率が28.1%となっており, すでに超高齢化社会に突入している.
     さらに2025年には約800万人いるとされている団塊の世代が後期高齢者となり高齢化率は30.3 %に達すると推計され「2025年問題」として問題視され医療体制も大きく変容を求められ, 多くの高齢者は在宅や介護施設で訪問診療および訪問ケアを受ける時代となっている.
     足病変の高リスク群と言われている糖尿病や透析患者の高齢化も認められており, 急性期病院の平均在院日数を大幅に超える治療期間を要することが多い足病変でも, 急性期の治療後スムーズな後方支援, 在宅医療への移行が期待されるが, 適切な連携が実施されているところはいまだ少ないのが現状である. 適切な連携を阻むものは何か, 解決策も含め解説する.
  • 竹内 一馬, 古澤 美和子
    2022 年 3 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
     2018年9月に足と心臓血管を専門とするクリニックを福岡市に開業して4年目を迎えた. 現在の診療体系上, 通常診療中の昼休みや診療後に往診するのは困難であり, 依頼された在宅診療を断らざるを得なかった. しかしながら, これまで在宅診療を行えた2名の患者とご家族には満足いただいている.
     症例1: 70歳代, 高度認知症, 不穏, 施設入所中. 両下肢の足趾チアノーゼ, 壊疽を認める. 入所施設で看取りたいことが家族の希望であった. 積極的な治療は望まないが, 本人の苦痛が少ないような処置の希望があり, 当院の介入を開始した. 穏やかに過ごされ施設で看取れたことを家族から感謝された1例であった.
     症例2: 80歳代. 両下肢うっ滞性皮膚炎・広範囲皮膚潰瘍, 両側下肢静脈瘤, 虚血性心疾患, 心不全, 洞不全症候群 (永久ペースメーカー植え込み). 通院治療を経て在宅診療へ移行した. 訪問看護を導入したことで衛生状態が改善し治癒に至っている.
     今回はこれらの症例経過を供覧するとともに, 当院のような足病を得意としている専門クリニックでの外来診療, 在宅医療, 介護との連携の現状とその問題点や展望について述べる.
  • 今野 康子
    2022 年 3 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
     「foot」の意味は「 (人・動物の) 足 (くるぶしより下) 」の他に, 「歩み」「足取り」という意味もある. また「foot」の慣用句に「have a big foot」という言葉がある. 直訳すれば「大きな足をもっている」であるが, goo辞書によると, 「大きな影響力をもっている」「重要な地位を占める」という意味があるそうだ.
     私たちは生まれてから今に至るまで, 地球上に立ち, さまざまな場所に出歩き, 個々の人生を歩んできた. それを支えていたのは「足」であり, これから先も私たちの人生に大きな影響力をもち続けることであろう.
     「生活者一人ひとりの大切な足を在宅でケアをしていくこと」は, まさに「個人の生活基盤を保持し, 住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう支援すること」につながるのではないだろうか.
     患者の足を守るため, そして患者が自分らしい生活を安心して送るための「フットケア」とはいったい何なのか, 考えてみたいと思う.
原著
  • 伊藤 茂, 上村 哲司, 渡邊 英孝, 楊井 哲, 川野 啓成, 永野 義博, 中川 栄治, 上口 茂徳
    2022 年 3 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
     【目的】神経障害性糖尿病足潰瘍に対するOPTIMAを用いた治療において, その治療効果, 合併症, 合併症発生の危険因子を明らかにするため, 糖尿病患者の足底部潰瘍に対する免荷治療の前向き研究を行った. 【方法】2016年4月~2019年3月, 糖尿病患者の足底部潰瘍に対して着脱式の免荷ブーツであるOPTIMAを用いた12症例において, 年齢, 性別, 潰瘍の深さ, 装着期間, 1日の装着時間, またその治療効果を検討した. 【結果】潰瘍治癒5例, 潰瘍縮小3例を有効と判断したが, 改善なし2例, 治療ドロップアウト2例も存在した. 装着に伴う有害事象の発生は1例に靴擦れが生じたのみで, 保存的加療で治癒した. 【結論】神経障害性糖尿病足潰瘍に対する治療において, フットケア, フットウェア, そしてoff loading(免荷)治療が大事である. OPTIMAを用いた欧米の先行研究における, 3ヵ月治癒率は80%であり, 今回われわれの対象群では治癒・縮小率は80%であった. 有害事象の発生は1例に靴擦れが生じたのみであった. 神経障害性糖尿病足潰瘍の治療において, 有効な免荷装具であると考える.
症例
  • 清田 成晃, 近藤 恵理子, 石井 達也, 渡井 陽子, 林 久恵
    2022 年 3 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
     小切断により接地領域が減少し, 足底負荷の分布異常が生じる. 対側に疼痛を伴う足病変を有する場合, 小切断側の足底負荷量が増大する可能性があり潰瘍形成リスクを高める可能性がある. この症例報告では, 小切断後, 対側足趾で潰瘍形成を認めた2人の糖尿病患者の歩行時の足底負荷の特徴を調査した. いずれの症例も末梢神経障害があり, 足関節の背屈可動域制限を認めた. 調査結果より, 潰瘍部位である前足部の最大荷重量は, 小切断既往肢の前足部荷重量よりも著明に低かった. しかし, 症例1では前足部荷重量が健常高齢者の平均よりも高く, 症例2では健常高齢者の平均よりも低かった. 両症例には共通の理学所見が観察されたが, 症例1の10mの歩行時間は症例2よりも11秒短かった. 2症例の比較より, 同じ理学所見を有していても前足部の負荷量は歩行速度などの運動学的要因に依存することが示された.
  • 高井 佳菜子, 大谷 則史
    2022 年 3 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
     人工血管による末梢バイパス術では, 人工血管と動脈との間に伸展性のミスマッチが生じるため, 遠隔期の吻合部内膜肥厚につながりうる. そこで末梢吻合部におけるグラフトと動脈の間の伸展性のミスマッチを是正する目的で, Miller cuffやLinton patchなどの静脈パッチ形成術が施行されることがある. 本症例は浅大腿動脈-後脛骨動脈バイパス術を施行した重症下肢虚血の1例である. 初回手術で同側の大伏在静脈の中枢側を使用しており使用できる静脈長が限られているうえ, 静脈径が2mmと細径であった. 中枢吻合部である浅大腿動脈は全周性の石灰化があり, 吻合部において良好な視野を確保するために10mmほどの切開を置いたところ, グラフト径に比して吻合部が相対的に大きくなったため, 形状の良い吻合部を作成する目的でLinton patch形成術を施行した. 使用可能なグラフト長やグラフト径に制限がある場合, 中枢吻合部に対するLinton patch形成術は有用な手術手技である可能性が示唆されたため, 文献的考察を加えて報告する.
  • 川口 辰巳, 齋藤 順平, 高岡 聡美, 新井 清仁, 石川 昌一, 市岡 滋
    2022 年 3 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/01/31
    ジャーナル フリー
     新型コロナウイルス感染症 (novel coronavirus disease 2019; 以下COVID-19) において, 四肢動脈に動脈血栓症を合併し四肢切断に至る報告があるが, いまだ救肢のための確立された治療法はない. われわれはCOVID-19に伴う急性下肢動脈閉塞により足部壊死を生じた1例を経験した. 血管内治療による血行再建では血流の改善は得られなかったが, 抗凝固療法と高気圧酸素療法により足部の血流が改善した. さらに外科手術や局所陰圧閉鎖療法などによる創傷治療を行うことで, 切断することなく救肢に至ることができた.
日本フットケア・足病医学会 役員・評議員名簿
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