2023 年 4 巻 2 号 p. 92-99
膝下の動脈は血管径が細く流速が遅いこと, 高度な石灰化や長区間の閉塞を来す頻度が高いことなど, 浅大腿動脈領域と比しても厳しい環境である. 膝下動脈の動脈硬化病変は下肢の壊疽, 切断などにつながりやすく, 5年生存率は50%以下とある種の悪性腫瘍の予後よりも悪いことも報告されている. したがって, 早期の治療介入が重要である. 薬物治療, 形成外科・整形外科学的なアプローチ, フットケアなど集学的かつ包括的な治療が必要であるが, 血行再建術は切断範囲を狭くするうえでも, 重要な位置づけとなっている. 膝下動脈に対するカテーテル治療は, ステント登場以前より行われているバルーン拡張術がほぼメインであり, 治療法の進歩が望まれる領域である. われわれ研究チームは, 膝窩動脈以下においても長期開存が期待できる新しい薬剤溶出性ステント (ハイブリッドナノコーティングステント) の実用化研究を行っており, 現在は, AMED橋渡し研究プログラム (シーズF) にて2022年度 (5年間の予定) より許認可申請のための前臨床試験, 治験のための国家プロジェクトに採択され, 現在までのところ極めて優れた成績が得られている. 本稿ではわれわれの最新研究について概説する.