2023 年 4 巻 3 号 p. 171-176
大動脈壁在血栓症は下肢血栓塞栓症を起こす比較的稀な疾患である. 今回われわれは大動脈壁在血栓症が原因と思われる下肢動脈閉塞症の3例を経験したので報告する. 全例で抗凝固療法を施行し, 1例で大動脈壁在血栓の飛散予防にステントグラフトを留置した. 1例に抗凝固療法中断中の塞栓症の再発を認めた. 大動脈壁在血栓症に対する治療は確立されていないが, 抗凝固療法に加えて近年ステントグラフトを用いた治療が報告されている. 当院では抗凝固療法を中心とした内科的治療を第一選択としてきたが, 3例とも抗凝固療法中の塞栓症の再発は認めていない. 今後も慎重な経過観察を行いつつ, 塞栓症の再発や大動脈壁在血栓が増大すればステントグラフトなど塞栓源への直接的な外科的治療を検討する必要がある.