日本フットケア・足病医学会誌
Online ISSN : 2435-4783
Print ISSN : 2435-4775
特集:膝下領域血管拡張困難症例の次の一手
CLTIに対する高気圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy : HBOT)
大浦 紀彦久原 亮二中山 大輔長坂 優香草間 峻Chen Yi Syuan松井 孝太郎加賀谷 優舟橋 紗耶華木下 幹雄宮本 明
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2024 年 5 巻 3 号 p. 169-174

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抄録

 包括的高度慢性下肢虚血 (chronic limb-threatening ischemia, 以下CLTI) 治療は虚血部位に対する血行再建術を施行し, 切断を回避または切断部位を最小範囲に限定し創傷治癒を獲得し歩行を維持させることにある. 近年, 足関節以下の動脈の障害を認める症例が増加している. このような症例ではEVTだけでは創傷治癒が得られず上流の血行再建を行った後で代替療法が選択される. 高気圧酸素療法 (HBOT) は代替療法のひとつで, チャンバーの中に患者を収容し (図2), 大気圧よりも高い気圧環境下で, 患者に純酸素または高濃度酸素を吸入させ, 動脈血の血漿内の溶解型酸素濃度を上昇させ, 低酸素状態にある組織の改善をはかる治療法である. 一般的にHBOTは虚血(CLTI), 感染, 浮腫の3つの病態に効果を発揮する. CLTIにおけるHBOTを使用する上での注意点は, HBOTは動脈の狭窄や閉塞を治療するものではないため, まず血行再建を行い上流の動脈血流を再建しておくことである. またCLTIでは常に再狭窄を考慮する必要があり, 虚血を認めた場合には血流を評価しただちに血行再建術を行うことが重要である.

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© 2024 一般社団法人日本フットケア・足病医学会
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