【目的】糖尿病足病変による下肢切断者は, その合併症などの影響で, 運動耐容能が低いことが多い. このため, 義足歩行の獲得には, 早期から活動を確保することが重要である. 今回, 予備能力の低い患者に対し, 平行棒内歩行や車椅子自立など低い能力でも取り組める理学療法を提供した. 本報告は, その具体的なアプローチを示し, 義足歩行獲得への影響を考察する.
【症例】60代, 男性, ガス壊疽による左下腿切断術後に回復期病院に転院.入院時, 非切断肢に感覚鈍麻と下垂足を呈し, 両下肢に筋力低下や関節可動域制限が著明であった.支持物を使用しても片脚の立ち上がりが困難で, 日常生活は車椅子で介助を要した.
【介入】義足歩行を目標としながらも, 車椅子での日常生活自立にも焦点を当て, 運動耐容能向上, 身体バランス獲得, 関節可動域拡大, 筋力増強等の介入を行った.
【結果】運動耐容能, 筋力と関節可動域が改善し, 義足装着後20日で独歩可能, 入院120日後に自宅退院した.
【考察】段階的アプローチが, 活動性を向上し, 義足歩行獲得に寄与した.障害が重複した症例でも, 適切なリハビリテーションの提供により, 義足歩行の可能性を高められる.