2012 年 10 巻 2 号 p. 3-9
【背景】日本は一般的に集団や文化において同質社会を形成している。このため、人々はあまり人の多様性を意識していない。本稿は、遺伝学教育のあり方を考察するため、幼児期の子供を持つ母親が人の多様性をテーマに話し合った経験について記述することを目的とした。
【方法】研究同意を得た幼児期の子供を持つ母親8名により、人の多様性をテーマとしたフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)を行ない、解釈学的現象学的分析をした。
【結果】結果として3つのテーマが挙がった。参加者は「人の多様性」が示す言葉の意図をよく理解していた。しかし、実際には「才能の埋没」「周囲への迷惑」「障害の差別」を気がかりに感じていた。
【結論】本研究を通して、子供だけでなく母親にも、遺伝学の基礎知識が遺伝的多様性や個人差を受け入れるために重要であることが明確になった。結論として、一般市民に対し、継続的かつ親子を対象とした遺伝学教育の必要性が示唆された。