2023 年 7 巻 1 号 p. 1-8
これからさらに進む少子高齢化時代に向けての医療体制のあり方は在宅医療が中心となる。一方で、コロナ禍後の医療、そして2024年4月から実施される医師の働き方改革に向けた医療のあり方は、地域の救急医療対応を含め今後の大きな課題となり十分な対策が必要となる。これらの困難が予測される医療環境のなかでの地域の医療連携体制をどう構築するのか。しかしながら医療提供体制はその地域、医療圏で大きな違いがあり、その地域に合った体制の構築が必要となる。今回は倉敷市を中心とした岡山県南西部医療圏での取り組みを紹介したい。その中心となる考え方が医療のエコシステムの構築である。
医療のエコシステムとは各医療機関や介護施設のもつ資源・機能を共有し、それらをいかに有効にバランスよく機能させるため地域全体として調整を図り、お互いに連携、協力しながら地域医療全体の質向上と効率化を目指すものである。そのためのプラットフォームとしてのカルテや画像などの患者情報の共有、画像診断や検体検査の医療検査機器の共有化と検査体制の整備、医師をはじめ医療スタッフの人事の交流などが必要となる。今回はこのような連携のための基盤整備をどのように構築してきたかの状況を中心に報告する。同時にこれまでの災害、2018年西日本豪雨や2020年からの新型コロナウイルス感染症において地域としてどう対応してきたか、さらには今後予測される医師の働き方改革に向けての救急医療連携の取り組みなども報告する。