日本在宅救急医学会誌
Online ISSN : 2436-4738
Print ISSN : 2436-066X
7 巻, 1 号
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目次
総説
  • 山形 専
    原稿種別: 総説
    2023 年 7 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

     これからさらに進む少子高齢化時代に向けての医療体制のあり方は在宅医療が中心となる。一方で、コロナ禍後の医療、そして2024年4月から実施される医師の働き方改革に向けた医療のあり方は、地域の救急医療対応を含め今後の大きな課題となり十分な対策が必要となる。これらの困難が予測される医療環境のなかでの地域の医療連携体制をどう構築するのか。しかしながら医療提供体制はその地域、医療圏で大きな違いがあり、その地域に合った体制の構築が必要となる。今回は倉敷市を中心とした岡山県南西部医療圏での取り組みを紹介したい。その中心となる考え方が医療のエコシステムの構築である。

     医療のエコシステムとは各医療機関や介護施設のもつ資源・機能を共有し、それらをいかに有効にバランスよく機能させるため地域全体として調整を図り、お互いに連携、協力しながら地域医療全体の質向上と効率化を目指すものである。そのためのプラットフォームとしてのカルテや画像などの患者情報の共有、画像診断や検体検査の医療検査機器の共有化と検査体制の整備、医師をはじめ医療スタッフの人事の交流などが必要となる。今回はこのような連携のための基盤整備をどのように構築してきたかの状況を中心に報告する。同時にこれまでの災害、2018年西日本豪雨や2020年からの新型コロナウイルス感染症において地域としてどう対応してきたか、さらには今後予測される医師の働き方改革に向けての救急医療連携の取り組みなども報告する。

活動報告
原著
  • 佐藤 悠子, 中野 秀比古, 奈良場 啓, 望月 將喜, 高橋 雄治, 園生 智弘, 中村 謙介
    原稿種別: 原著
    2023 年 7 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    【背景】高齢化が進むにつれ顕在化している急性期医療領域での入院患者の出口問題や患者・家族の意思を尊重した医療提供のため看取りを含めた在宅医療の介入が選択肢にあがる。【方法】2018年4月1日~2021年7月31日の間に日立製作所日立総合病院救命救急センターに入院した65歳以上の患者の電子診療録を用いて入院患者の転帰や入院期間を検討した。【結果】訪問診療介入は2018年度の12人から16人、27人と年々増加し、自宅看取り方針も2018年度、2019年度は2~3人だが2020年度は7人だった。入院期間中央値は入院患者全体6日(3~10日)、訪問診療介入13日(8~17日)、転院12日(6~23日)だったが、入院最長期間は訪問診療介入53日に対し転院は100日以上が散見され、死亡は333日だった。【結論】転院や施設退院が困難な症例では、看取りも含めた在宅医療を調整することで救命救急センター長期入院症例を減少させる可能性がある。

  • 吉川 徹二
    原稿種別: 原著
    2023 年 7 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2023/10/31
    公開日: 2023/12/02
    ジャーナル フリー

    【背景および目的】近年、超高齢社会の進行に伴い身寄りや家族支援のない独居高齢者の救急搬送症例が増加傾向にある。今回われわれはこれらの概要を明らかにするため蘇生会総合病院での救急入院症例を検討した。

    【対象および方法】2015年3月~2021年6月の身寄りや家族支援のない高齢の救急入院患者36例を対象とし、後方視的検討を行った。

    【結果】搬入時の情報が乏しく、15例で生活や医療の情報が得られなかった。15例で家族と連絡が取れたが、家族がキーパーソンとなったのは11例であった。本人の判断能力喪失時には侵襲的処置の医療同意をとることが困難な場合があった。在院日数の中央値は27.5日で、施設への入所では在院日数は長かった(p<0.01)。

    【結語】身寄りや家族支援のない独居高齢者の救急搬送症例では医療情報やキーパーソン不在のなかで初療を行う可能性があり、侵襲的な処置に対する医療同意の取得が困難な場合が認められた。

活動報告
編集後記
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