抄録
外傷性視神経症の発生機序は単一でなく,その障害の程度も一様でなく受傷時の損傷の程度が強ければ,回復が難しいこともある。今回われわれは船舶作業中に8メートルの高さから転落して受傷した視神経管骨折症例を経験した。受傷の翌日に視力低下を自覚し,左眼対光反射の減弱と左眼視力低下(手動弁),CTで左視神経管骨折を認めたことから外傷性視神経管症の診断で同日,内視鏡下視神経管開放術を施行した。視力は術直後から指数弁となり最終的には裸眼視力0.3に改善したが,完全回復には至らなかった。手術適応,時期に関しての統一的な見解はないが,決して同一でない個々の症例に早期にかつ適切に対応していくことが重要と考えられた。