抄録
たかつかさ保育園はUR花園団地内にあり、この地は明治政府が設立した京都蚕業伝習所、その後継の京都工芸繊維大学繊維学部の学舎の跡地である。保育活動に養蚕を導入した当初のねらいは、子どもたちにこの土地で昔は養蚕をしていたことを想像させたかったからである。 和装産業の集積した西陣地域に近く、それらに関連する高齢者との交流が生まれ、様々な技術援助が得られた。子どもたちは蚕飼育と繭の収穫、生糸と真綿づくり 染色、繭玉人形などのそれぞれのプロセスで、お年寄りの技能に触れた。さらに、この養蚕に関心をもった過疎山村の高齢者が桑栽培を営んでいた当時の記憶を呼び覚まし、 新たに桑畑を造成することになった。 養蚕は幼児と高齢者のそれぞれの生活に自然と伝統技術とのかかわりを意識させ、 発展的な交流を作りだしている。 一過性の行事ではなく、地域の産業文化との関係を活かした世代間交流の意義と課題を考察する。