抄録
ガマ腫と術前診断され,術中に類皮囊胞と判明した口腔底発生の1例を報告する。症例は34歳男性で1年前からの左口腔底腫脹を主訴に受診した。CT,MRIで左舌下間隙に6×5×3.5cm大の囊胞性腫瘤を認め,粘性貯留液10mlを吸引,細胞診はclass Iでガマ腫と診断,舌下腺全摘を行った。術中,舌下腺深部に被膜を伴う囊胞を認め,壁に小切開を入れると毛髪を含む乾酪様内容物を認め,類皮囊胞と診断した。内容物を掻爬し減量後,口内法で全摘した。病理所見上,重層扁平上皮に覆われた囊胞で皮脂腺,毛囊,汗腺を伴い内腔に角化物と毛髪を含み,類皮囊胞と診断した。ガマ腫との鑑別は時に困難だが,MRI T2強調画像での不均一像,圧排拡張像,穿刺液の性状が鑑別点になる。