頭頸部外科
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23 巻, 2 号
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パネルディスカッション
頭頸部重症感染症への外科的対応
  • ―眼窩骨膜下膿瘍を中心に―
    近藤 健二, 井上 亜希
    2013 年 23 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    鼻性眼窩内合併症は副鼻腔の炎症が眼窩に波及し視器障害を来たす疾患である。その中で耳鼻咽喉科が取り扱う頻度の高い眼窩骨膜下膿瘍は幼少児では内側型が多く,年長児から成人では上壁型が増える。治療法は抗菌薬の経静脈投与とドレナージ手術の2つに大別されるが,年長児~成人,内側型以外,広範進展,視機能障害,抗菌薬投与後も症状が悪化,などの場合は速やかに手術療法を検討する。起因菌は連鎖球菌,インフルエンザ菌が多く,年長児や成人では嫌気性菌の複合感染が増えるのでそれに合わせて抗菌薬を選択する。ドレナージは膿瘍が眼窩内側中心の場合は鼻内内視鏡下の排膿法が用いられ,上下方や外側を中心に存在する場合は鼻外切開を併用する。
原著
  • 高橋 一広, 樫尾 明憲, 柿木 章伸, 坂本 幸士, 岩崎 真一, 山岨 達也
    2013 年 23 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    耳掻きによる直達外傷により迷路気腫を生じ,術中所見でアブミ骨が前庭窓に陥入して瘻孔が確認できたことから外傷性外リンパ瘻と診断できた1例を経験したので報告した。症例は46歳男性。耳掻きで右耳を受傷した。直後より右難聴,右耳鳴,めまい,嘔気を認め当科紹介受診となった。右鼓膜前下象限~後上象限に穿孔を認め,左向き水平回旋混合性眼振を認めた。標準純音聴力検査では3分法で36.7dBのA-B gapを伴う96.7dBの混合難聴であった。側頭骨CTでは前庭,外側半規管,蝸牛内にlow density areaを認め,気泡の混入が疑われた。以上から迷路気腫を伴う外傷性外リンパ瘻を疑い,緊急手術を施行した。治療によりめまい症状は消失し,術後4か月後の標準純音聴力検査では3分法でA-B gap20.0dB,聴力レベル75.0dBであった。
  • 高橋 洋城, 大西 将美, 棚橋 重聡, 坂井田 譲, 森 健一, 水田 啓介
    2013 年 23 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    今回,われわれはHBs抗原陽性の上顎洞扁平上皮癌患者で,B型肝炎の再活性化をきたした1例を経験したので報告する。症例は60歳女性で,右眼瞼下垂,眼球突出を主訴に当科へ紹介された。CT撮影で右上顎洞を占拠し,頰部と眼窩に進展し骨破壊を伴う腫瘍を認めた。PET-CTで多発肝転移を認め右上顎洞癌T4N0M1と診断した。CDDPと5FUの化学療法を行った後に正常だった肝機能に障害を認め,B型肝炎の再活性化と考え,核酸アナログ(バラクルード®0.5mg)の投与を開始した。B型肝炎の再活性化について,ガイドラインを周知徹底し肝臓専門医に相談することが重要である。
  • 大道 亮太郎, 假谷 伸, 岡野 光博, 牧原 靖一郎, 小野田 友男, 江口 元治, 西﨑 和則
    2013 年 23 巻 2 号 p. 141-144
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    glomangiopericytomaは鼻副鼻腔原発の血管周囲筋様細胞の表現型を伴う境界から低悪性度の新生物である。その発生頻度は全鼻副鼻腔腫瘍のうち1%以下とされており,非常にまれな腫瘍である。この腫瘍は従来hemangiopericytomaの一亜型とされてきたが,一般的な軟部組織に発生するhemangiopericytomaとは発生部位,生物学的挙動,組織学的特徴の観点から区別され,2005年のWHO基準にて正式に疾患分類として登録された。比較的新しい疾患概念であることなどから,hemangiopericytomaとの鑑別が十分なされていないことがあり,注意を要する疾患とされている。われわれは今回鼻出血を主訴に来院した右鼻腔原発のglomangiopericytomaに対し,内視鏡下に切除手術を施行し,良好な経過を得た1例を経験したので報告する。
  • 柴山 将之, 大脇 成広, 清水 猛史
    2013 年 23 巻 2 号 p. 145-149
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性。上顎癌に対し,20年前に手術と放射線加療を行い経過観察していた。上顎の切除部に肉芽様組織が出現し増大傾向を示したため,手術を行った。病理診断は炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(Inflammatory myofibroblastic tumor;IMT)であった。組織学的所見は筋線維芽細胞様の紡錘形細胞が増生し,炎症細胞の浸潤が散見された。免疫組織染色ではvimentinとSMAは陽性,ALK,desmin,サイトケラチンは陰性であった。これまで炎症性偽腫瘍や形質細胞性肉芽腫などと診断されていた病変がIMTに該当すると考えられている。
  • 佐藤 伸也, 橘 正剛, 横井 忠郎, 山下 弘幸
    2013 年 23 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性で,脳梗塞加療中に原発性副甲状腺機能亢進症が判明した。超音波検査では局在診断がつかず,99mTc-MIBIシンチグラフィで喉頭右側に集積を認めた。頸胸部造影CTにて下咽頭右梨状陥凹の背側に,動脈相で強く一様に造影される1.5cmの扁平な腫瘤を認めた。平成20年12月某日に摘出術を施行,腫瘤は下咽頭収縮筋の外側に存在していた。腫瘤の重量は512mgで,病理診断は副甲状腺腺腫であった。術後,Caおよびintact-PTHはいずれも正常化し,以後再発を認めていない。第IV咽頭囊由来の副甲状腺組織が発生過程で下咽頭背側にとどまり,その副甲状腺組織から腺腫が生じたものと考えられた。
  • 前田 明輝, 梅野 博仁, 千年 俊一, 小野 剛治, 進 武一郎, 中島 格
    2013 年 23 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    2000~2011年の間に当院で治療した舌癌症例の内,不幸な転帰を辿った舌癌8症例(T1N0:4例,T3N0:4例)について臨床病理学的検討を行った。性別は男性5例,女性3例,年齢は45~77歳。検討項目は治療法,死因,後発頸部転移の有無,病理像とした。
    結果:全例手術を行い,2例に断端陽性のため,術後照射をしていた。死因はリンパ節死6例(全例後発頸部転移例),原発巣死2例(断端陽性例)であった。全例が高分化型扁平上皮癌で,神経周囲浸潤3/8例(38%),脈管浸潤6/8例(75%),筋層・深部浸潤(5~17mm)を認めた。
    考察と結語:深部浸潤が4mm以上で,脈管浸潤を来した症例は後発頸部転移に対する予防的郭清を考慮している。癌の細胞生物学的悪性度(Ki-67)が予後に関与していることが示唆された。
  • 篠原 尚吾, 菊地 正弘, 十名 理紗, 金沢 佑治, 岸本 逸平, 原田 博之, 今井 幸弘, 宇佐美 悠
    2013 年 23 巻 2 号 p. 163-168
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    未治療の中咽頭癌患者24名につきヒトパピローマウイルス(HPV)の感染性を市中病院で可能な検査:PCR-invader法(PCR),Hybrid Capture法(HC),p16免疫染色(免染)で検討した。
    PCR,HCは検査業者に依頼,免染は当院病理部で行った。HPV陽性率はPCRで50%,HCで58%,免染で61%であった。PCRによる型判定では,陽性12例全例でHPV16が,1例でさらにHPV67が検出された。PCRでの陽性を基準とした場合のHC,免染の感度は各々100%,100%,特異度は83%,75%であり特異度に問題があった。HCの特異度が低い理由として陽性判定のカットオフ値に,免染の特異度が低い理由にはPCRでの検体の取り方に問題がある可能性が考えられた。
  • 上田 大, 信原 健二, 和田 義正
    2013 年 23 巻 2 号 p. 169-173
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    肺癌に対する全身検索中に発見された中咽頭未分化型多形肉腫の1例を経験したので,報告する。症例は85歳,男性。右後口蓋弓から発生する境界明瞭,可動性良好,弾性硬で圧痛の伴わない腫瘤を認めた。全身麻酔下に腫瘍摘出術を施行し,未分化型多形肉腫の診断を得た。肺病変に対しては胸腔鏡下右上肺葉切除術を施行し,組織型は腺癌であった。高齢者であり認知症もあるため,術後加療は外来にてテガフール・ウラシル配合剤の内服治療を施行した。術後5か月目に肺癌由来と考えられる多発性脳転移が出現,ガンマナイフ治療を施行したが,1年目に再発,認知症も増悪,ADLの低下もきたし,積極的な治療は行えず,緩和治療目的に他院に転院。術後1年5か月目に転院先で転移性脳腫瘍のため永眠された。一般に,未分化型多形肉腫の加療は手術加療が優先され,文献的にも口腔,咽頭領域でも手術加療が治療の第一選択であると考えた。
  • 栢野 香里, 鯉田 篤英
    2013 年 23 巻 2 号 p. 175-179
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    ガマ腫と術前診断され,術中に類皮囊胞と判明した口腔底発生の1例を報告する。症例は34歳男性で1年前からの左口腔底腫脹を主訴に受診した。CT,MRIで左舌下間隙に6×5×3.5cm大の囊胞性腫瘤を認め,粘性貯留液10mlを吸引,細胞診はclass Iでガマ腫と診断,舌下腺全摘を行った。術中,舌下腺深部に被膜を伴う囊胞を認め,壁に小切開を入れると毛髪を含む乾酪様内容物を認め,類皮囊胞と診断した。内容物を掻爬し減量後,口内法で全摘した。病理所見上,重層扁平上皮に覆われた囊胞で皮脂腺,毛囊,汗腺を伴い内腔に角化物と毛髪を含み,類皮囊胞と診断した。ガマ腫との鑑別は時に困難だが,MRI T2強調画像での不均一像,圧排拡張像,穿刺液の性状が鑑別点になる。
  • 今西 順久, 羽生 昇, 佐藤 陽一郎, 渡部 佳弘, 大塚 邦憲, 重冨 征爾, 藤井 良一, 坂本 耕二, 冨田 俊樹, 塩谷 彰浩, ...
    2013 年 23 巻 2 号 p. 181-191
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    当施設では下咽頭癌・声門上癌の0-II型/TisからT1-T2およびsize criteriaによるT3の一部に対し,低侵襲な喉頭温存治療のひとつとして経口的下咽頭声門上部分切除術を適用している。本術式に関する現在までに施してきた工夫点:(1)Valsalva負荷経鼻内視鏡,(2)Valsalva負荷CTによる術前評価,(3)内視鏡モニターの配置,(4)彎曲型咽喉頭鏡+ビデオスコープ下の術前観察,(5)ガスコン溶液による咽頭洗浄,(6)ヨード撒布法,(7)拡張式喉頭鏡および憩室鏡の選択,(8)経鼻挿入カテーテルによる排煙,(9)針電極システムの選択,(10)止血器具の選択,(11)断端粘膜の追加切除,(12)粘膜欠損に対するMCFP法について,考察を加えて紹介する。
  • 松下 直樹, 和田 匡史, 井口 広義, 寺西 裕一, 神田 裕樹, 山根 英雄
    2013 年 23 巻 2 号 p. 193-197
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    下咽頭梨状窩瘻は頸部外切開による摘出や,最近では瘻孔の化学的焼灼により治療が行われている。いずれの方法においても治療前の消炎が不可欠で,炎症の発症から根治手術までに一定期間を設けなければならない。しかし,下咽頭梨状窩瘻は学童期に好発することから学業などとの兼ね合いも考慮する必要に迫られジレンマを抱えることも多い。われわれは9歳の男児の感染性下咽頭梨状窩瘻に対し切開排膿後2週間で外切開による瘻管摘出術を行った。術中,組織の瘢痕癒着が強く色素による染色法では瘻管の同定ができなかったが,彎曲型咽喉頭直達鏡を用いた咽頭操作を併用し瘻管にゾンデを挿入することで瘻管を同定することができ,瘻管の摘出に成功した。
  • 田中 雄也, 山下 拓, 冨藤 雅之, 荒木 幸仁, 塩谷 彰浩
    2013 年 23 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,当科で一次治療を行った中咽頭扁平上皮癌症例45例について遡及的検討を行った。T1-T3の症例には経口的咽喉頭部分切除術(TOVS)あるいは化学放射線療法(CRT)を行い,一部のT3,T4の症例には外切開手術あるいはCRTを行った。病期III,IV期ではTOVSがCRTと比べ3年疾患特異的生存率が有意に良好で,TOVSの局所制御率が優れていた。病期III,IV期のp16陽性群の3年疾患特異的生存率は,陰性群に比べ良好な傾向を示し,p16発現が進行癌における予後因子になりえることが示唆された。また,p16陰性群ではTOVSが予後向上に寄与しており,積極的に手術療法を行うことが望ましいと考えられた。
  • 山下 懐, 長谷川 昌宏, 新垣 香太, 上原 貴行, 安慶名 信也, 真栄田 裕行, 鈴木 幹男
    2013 年 23 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    デスモイド型乳幼児線維腫症はまれな疾患である。良性腫瘍であり,転移を生じないが,周囲組織浸潤が強く,治療は手術による完全摘出が最良とされている。しかし,頭頸部に発生する場合,切除後の形態,機能,顎顔面骨の成長を考慮する必要があり,これらを犠牲にした完全摘出を行うか否かは意見の一致をみない。
    今回,2歳女児の右下顎部に発生したデスモイド型乳幼児線維腫症を経験した。腫瘍は下顎骨に一部浸潤していたが,年齢,切除後の形態,機能を考慮し,下顎骨を橋状に温存し腫瘍を摘出した。病理学的腫瘍残存が疑われたが,術後17か月経過し再発,増大を認めず,形態,機能も良好である。
  • 三橋 泰仁, 末田 尚之, 小泉 優, 佐藤 晋, 福崎 勉, 宮城 司道, 大門 康子, 鍋島 一樹, 中川 尚志
    2013 年 23 巻 2 号 p. 211-217
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    脂肪肉腫は軟部組織に発生する悪性腫瘍である。その好発部位は四肢や後腹膜であり,頭頸部での発生はまれである。5つの組織型に分類され,予後も組織型によって異なる。今回われわれは,再発する中咽頭線維性脂肪腫が長期経過で脂肪肉腫に悪性転化したまれな1例を経験したので報告する。症例は68歳の男性。長期に渡り軟口蓋の線維性脂肪腫の再発・摘出術を繰り返していた。66歳時に再発を認め,近医で摘出術を行ったところ高分化型脂肪肉腫に悪性転化していた。その2年後,再び軟口蓋の腫瘍性病変が再発し,当科を受診した。再発腫瘍から生検を行ったところ,脱分化型脂肪肉腫の診断であり,組織型の変化を認めた。
  • 大和谷 崇, 森田 浩太朗, 望月 大極, 杉山 健一, 瀧澤 義徳, 高橋 吾郎, 三澤 清, 細川 誠二, 峯田 周幸
    2013 年 23 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    要喉頭全摘後に発声目的で形成された咽頭気管瘻を閉鎖した症例を経験したため報告した。69歳男性,約30年前に喉頭癌で喉頭全摘術を施行された。同時に前腕皮弁を用いた咽頭気管瘻を形成し,笛式発声装置を留置された。経過は良好であったが,年齢とともに咽頭気管瘻が拡大し,発声・嚥下困難が出現した。発声装置の自己管理も困難となってきたため,当科紹介された。発声装置を外すと咽頭腔から直下に気管が観察され,食道入口部はピンホール状であった。
    術式:咽頭腔を開窓し,食道入口部を弁状に切開,咽頭前壁粘膜と縫合した。頸部の皮弁を用いて気管上端を閉鎖し,最後に大胸筋皮弁で被覆した。経過は良好で常食の摂取が可能となった。
  • 石永 一, 宮村 朋孝, 鈴木 洋, 大津 和弥, 中村 哲, 濵口 宣子, 竹内 万彦
    2013 年 23 巻 2 号 p. 225-229
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    喉頭摘出後の気管孔再発に対する手術は,その管理の複雑さや難治性のため,頭頸部手術の中で最も厄介な手術のひとつとされている。67歳男性で,三重大学病院で治療を行った喉頭摘出後の気管孔再発例を報告した。腫瘍は気管に浸潤し,縦隔進展がみられた。Sisson分類によればタイプIIIの気管孔再発であったが,手術が施行され短くなった気管の延長と頸部皮膚欠損の充填するために大胸筋皮弁で再建を行った。さらに術後照射も問題なく施行された。喉頭摘出後の気管孔再発の予後は未だ悪いが,拡大切除と集中的な術後治療により癌治療の予後が改善される可能性がある。
  • 齋藤 大輔, 松浦 一登, 浅田 行紀, 今井 隆之, 渡邊 幸二郎, 貞安 令, 西條 茂
    2013 年 23 巻 2 号 p. 231-234
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    喉頭全摘術後の縫合不全は長期の入院が余儀なくされる重大な合併症のひとつである。一般的には咽頭皮膚瘻形成後,外科的閉鎖術を行うが,頻回のガーゼ交換を要し,創管理にも難渋することが多い。今回,喉頭全摘出術後の縫合不全症例に対し,陰圧閉鎖療法(NPWT:Negative pressure wound therapy)を導入し,開口部レティナを咽頭ドレナージとして用いる管理法を考案した。咽頭皮膚瘻管理の工夫により,創周囲の唾液汚染がなくなり二日に一度の創処置のみで管理することができた。患者・医療者双方においてのストレスを回避でき,有効な処置法であった。
  • 高瀬 聡一郎, 清水 顕, 伊藤 博之, 清水 雅明, 近藤 貴仁, 鈴木 衞
    2013 年 23 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    腺様囊胞癌は耳鼻咽喉科領域では唾液腺に好発し,喉頭に発生することはまれである。今回われわれは声門上と声門下に発生した喉頭腺様囊胞癌を1例ずつ経験したので報告する。症例1は呼吸苦を主訴に来院し,顕著な声門下狭窄を認めた。生検した結果,腺様囊胞癌であったため喉頭摘出術を施行した。術中肉眼的に食道外膜へ浸潤を認め,また術後病理で甲状腺浸潤を認めた。そのため術後追加放射線治療を要した。
    症例2は嗄声を主訴に来院し,声門上に腫瘤性病変を認めた。生検の結果腺様囊胞癌であったため,喉頭摘出術を施行した。明らかな他臓器への浸潤は認めなかった。
    術後3年経過しているが,2症例とも局所再発,遠隔転移は認めていない。
  • 海沼 和幸, 矢野 卓也, 内藤 武彦, 鬼頭 良輔, 工 穣, 宇佐美 真一
    2013 年 23 巻 2 号 p. 241-248
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    要旨:両側頸部郭清術を行った146例の頭頸部扁平上皮癌患者のリンパ節転移の部位および頻度について患側および健側それぞれ検討した。また健側リンパ節転移に関しては臨床病理学的危険因子および術前評価する上でのfluoro-deoxy-glucose positron emission tomography(FDG-PET)の有用性を検討した。全体としてリンパ節転移は病理学的に60.3%に認めた。FDG-PETによる健側リンパ節転移の術前評価の精度は敏感度が58.8%で特異度は96.9%だった。cN0症例では健側のリンパ節転移率は非常に低値だった。健側リンパ節転移と3つの臨床病理学的因子の間に統計学的に有意差を認め,健側リンパ節転移発生の危険因子であることが示唆された。
  • 上田 哲平, 鵜久森 徹, 富所 雄一, 暁 清文
    2013 年 23 巻 2 号 p. 249-253
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    甲状腺に発生する脂肪肉腫は非常にまれで,海外の文献でも7例しか報告がない。今回われわれは,甲状腺に発生した脂肪肉腫の1例を経験したので報告する。症例は76歳女性で,右前頸部の腫瘤を自覚して当院内科を受診した。甲状腺右葉から左葉にかけて長径65mmの弾性軟の腫瘤を指摘され,当科を紹介受診した。確定診断および治療目的に甲状腺全摘術・D1郭清術を施行した。病理組織検査では高分化型脂肪肉腫と診断された。切除断端陽性との結果であり,術後照射を60Gy施行した。術後9か月で前縦隔に再発を認め,摘出術を施行した。以後は初回手術から1年4か月経過した現在まで再発は認めておらず,経過観察中である。
  • 原口 美穂子, 中溝 宗永, 三枝 英人, 酒主 敦子, 稲井 俊太, 横島 一彦, 大久保 公裕
    2013 年 23 巻 2 号 p. 255-259
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    頸部気管の腺様囊胞癌(ACC)では,根治性と喉頭を含めた臓器機能温存のバランスが治療の課題となる。われわれは頸部気管ACCに対し,気管切除と二期的再建術,術後放射線治療により,喉頭温存治療を行った。症例は39歳女性,主訴は呼吸困難であった。頸部気管後壁から右側壁にかけて内腔に突出する腫瘍を認め,気管切開と同時に生検を行いACCと診断した。手術では輪状軟骨から第6気管輪の右側後壁を切除し,頸部皮弁を挿入して気管皮膚瘻を造設した。瘻孔は二期的に閉鎖した。病理学的に切除断端陽性であり,放射線療法を追加した。現在,治療後7年が経過し,再発を認めていない。本法は気管ACC治療の選択肢のひとつになると考える。
  • 松塚 崇, 横山 秀二, 鈴木 政博, 岡野 渉, 西條 聡, 大森 孝一
    2013 年 23 巻 2 号 p. 261-266
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    甲状腺囊胞などの頸部囊胞性疾患に対し経皮的エタノール注入術(Percutaneous Ethanol Injection Therapy,PEIT)を施行し,その効果について報告する。2005年より2012年までに当科でPEITを施行した症例は13例であった。男性4例,女性9例で年齢は33歳から95歳,平均55歳であった。臨床診断は甲状腺囊胞が11例,頸部リンパ管腫が2例であった。PEIT前の囊胞の大きさは体積換算で3mLから160mLで平均44mL,PEITは1回から4回,中央値で1回施行し,施行後22%から100%,平均89%縮小した。PEITの合併症は針抜去時の局所痛以外に認められなかった。甲状腺囊胞や頸部リンパ管腫に対するPEITは治療効果と合併症の頻度の点で有用な治療法であると考えられた。
  • 松尾 美央子, 力丸 文秀, 檜垣 雄一郎, 益田 宗幸
    2013 年 23 巻 2 号 p. 267-273
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    今回われわれは75歳以上を高齢者として,頭頸部扁平上皮癌治療を行う際の問題点について検討した。対象は2005年1月から2009年12月の間に当科で治療した75歳以上の66症例で,このうち10%がperformance status(以下PS)不良(PS3-4)であった。また77%の症例に併存疾患が認められた。初回治療では98%の症例にほぼ方針通りの治療を施行できたが,再発時には48%に対して姑息治療が選択された。66例の3年粗(死因特異的)生存率は56%(71%)で,PS3-4群の生存率はPS0-2群に比して有意に不良であった。しかし治療前併存疾患の有無や,治療による合併症の有無では生存率に有意差を認めなかった。以上より高齢者の癌治療において,実年齢や併存疾患の有無よりも,PSが予後を左右する重要な因子と思われた。
  • 成田 憲彦, 加藤 雄士, 森川 太洋, 意元 義政, 岡本 昌之, 須長 寛, 藤枝 重治
    2013 年 23 巻 2 号 p. 275-279
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    2006年6月から2012年6月までに当科で施行された甲状腺および副甲状腺手術症例において,非反回下喉頭神経,右鎖骨下動脈起始異常の有無についてretrospectiveに解析を行った。症例はCT画像,手術記録を渉猟できた甲状腺片葉切除術(267例),甲状腺全摘(亜全摘)術(126例),副甲状腺摘出術(12例)の計405例に関して検討した。その結果,非反回下喉頭神経症例を2例認め,これらはともに右側であった(全症例の0.49%)。また2例とも右鎖骨下動脈起始異常を伴っていた。今回,術中神経モニタリングを用い安全かつ容易に非反回下喉頭神経を同定・温存できた症例を経験したので併せて報告する。
  • 横島 一彦, 中溝 宗永, 稲井 俊太, 酒主 敦子, 細矢 慶, 吉野 綾穂, 原口 美穂子, 大久保 公裕
    2013 年 23 巻 2 号 p. 281-284
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/15
    ジャーナル フリー
    高齢頭頸部癌患者は増加しているが,明確な治療指針はなく,治療の限界を症例毎に考えているのが現状である。そこで,過去10年間に当科を初診した75歳以上の頭頸部癌患者173例を対象に診療内容を解析した。
    喉頭癌に対しては80%に根治治療が可能であった。一方,口腔・下咽頭・中咽頭癌に対する治療法の選択は複雑で,特に80歳以上で根治治療が可能であった症例は半数以下であった。両群とも根治治療が不可能な理由は併存疾患の存在であった。
    以上から,高齢頭頸部癌患者への対応では併存疾患の評価が重要であると考えられた。また頭頸部癌治療後の,併存疾患の経過も加味した癌治療適応の判断が必要であると思われた。
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