抄録
術前の細胞診では神経鞘腫の確定診断には至らなかったが,術中所見により顔面神経鞘腫と診断した症例を報告する。症例は30歳男性,半年前から右耳下部の腫脹を自覚し徐々に大きくなってきたため当科を受診。初診時には触診で右耳下部に径3cmの可動性の腫瘤を認めた。精査目的に超音波検査を施行し,同時に施行した穿刺吸引細胞診で神経由来腫瘍も否定できない結果であったため,神経鞘腫の可能性も考慮しながら手術を施行した。術中に腫瘍と顔面神経の関係から顔面神経鞘腫と診断し,被膜間摘出術で腫瘍を摘出した。術後に柳原法で20/40点の顔面神経麻痺を認めたため,コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム,アデノシン三リン酸ナトリウム水和物,メコバラミンを投与して経過を見ていったところ,術後2か月で麻痺は32/40点まで回復し,現在も外来で経過観察中である。