抄録
甲状腺癌のうち,高分化癌(濾胞癌,乳頭癌)は予後良好といわれているが,その中にも再発を反復,遠隔転移を来たすことで予後不良の経過をたどる一群が存在する。甲状腺癌の根治性をさらに高め,生存率を向上させるためにはこの予後不良群に対する診療方針の検討が必要と考えられる。
当科における過去11年間の甲状腺高分化癌137例を対象として,再発規定因子を検討したところ,術後の病理所見で「静脈浸潤あり」,「頸部外側区域リンパ節転移あり」,「甲状腺被膜外浸潤あり」が再発規定因子になるという結果を得た。再発のリスクが高いと予測される高分化癌症例に対する今後の治療方針の指標作成を目指した。