抄録
耳下腺腫瘍の手術における術後顔面神経麻痺の予防には,十分な術前診断,術中の適切な判断,熟練した手術手技の習得が必要である。術前診断では,MRIや超音波検査を用いて,質的診断とともに局在診断し,十分な患者や家族へのインフォームドコンセントをすることが重要である。術中の神経刺激装置の使用は,術者のスキルアップに有用であり,手術時間の軽減が期待できるが,耳下腺良性腫瘍の術後顔面神経麻痺の軽減には寄与しない。一方,再発耳下腺腫瘍の手術では神経刺激装置の有用性は高い。しかし,基本的には解剖を熟知して手術書を元に手術に臨むことが最も重要で,神経刺激装置はあくまでも補助的な役割とするべきである。