聴神経腫瘍の治療方針には,(1) 経過観察 (wait and scan),(2) 放射線治療,(3) 摘出術がある。しかし個々の症例でどれが最善かの選択は容易ではない。耳鼻咽喉科の役割はまず早期に診断することである。更に,診断から治療前の過程では,治療方針決定のガイドとしての役割が求められる。手術リスクが強調されすぎるのは妥当ではない。超音波手術器や顔面神経モニタリングを用いて,より安全な手術を目指すことは可能である。治療から治療後の過程では,神経機能を守る立場から積極的に関与していくことが重要である。耳鼻咽喉科単独で完結できる疾患ではないが,求められる役割は多岐に及ぶ。更に多くの耳鼻咽喉科医が積極的に関わっていくことが望まれる。