輪状軟骨切開術は,輪状軟骨前方部分の鉗除を行う気道確保術であり,皮膚から気管までの距離が短く甲状腺の操作も必要としないため,安全性の高い術式である。われわれは,前頸部膿瘍,出血傾向,短頸および上気道狭窄の緊急度が高く通常の気管切開術が困難な4症例に対し輪状軟骨切開術を施行し,術後に切開孔を閉鎖しえた。これまで輪状軟骨の損傷は肉芽形成の可能性があり推奨されていなかったが,全例で声門下の肉芽増生はなく経過している。輪状軟骨切開術は,手術リスクの高い症例に対しても安全に行える術式であり,また術後に切開孔を閉鎖する場合でも必ずしも肉芽形成による気道狭窄などの理由とはならず,有効な術式であると考えられた。