抄録
65歳男性。舌癌(T3N0M0)にて舌部分切除ならびに頸部郭清術を施行している。術後11日目より創部から浸出液の流出を自覚,術後13日目に発熱あり,咽頭痛・胸痛を伴ってきたため術後14日目に受診。短時間のうちに急激に全身状態の悪化を認め,敗血症性ショックとして治療介入を行ったが,救命しえず,来院後24時間で死亡した。後日,頸部浸出液からの細菌培養にてStreptococcus pyogenesが検出され,劇症型溶血性連鎖球菌感染症(STSS)と診断した。分離菌の血清型はM12型であり,保有する発熱毒素遺伝子はspeB,speF陽性であった。STSSは急激にショック状態に陥るため救命困難なケースも多い。頭頸部領域においてはまれな疾患ではあるが,鑑別のひとつとして考慮に入れて診療にあたる必要がある。