2021 年 31 巻 1 号 p. 71-76
歯原性粘液腫は顎骨に発生する比較的まれな良性腫瘍である。顔面の変形や複視をきたすため手術が第一選択とされるが,周囲組織を含めて切除するか腫瘍摘出と掻爬に止めるかは意見が分かれる。症例は40代女性,右頰部違和感,鼻閉を主訴に来院,CT,MRI検査で右上顎洞内に44mm大の腫瘍を認めた。局所麻酔下に経下鼻道で上顎洞内から生検し,歯原性粘液腫と診断された。治療は,endoscopic modified medial maxillectomyでの腫瘍の切除および抜歯を行い,掻爬を行った。一期的に手術と抜歯を行ったことで,抜歯窩と鼻腔双方からのアプローチが可能となり,良好な視野で掻爬することができた。