2021 年 31 巻 1 号 p. 77-83
中耳腺腫は非特異的な臨床所見を呈する稀な疾患であり,鑑別が難しい。組織検査にて確定診断が得られるが,中耳カルチノイドとは組織学的にも区別が難しく,類義疾患とされている。今回われわれは術前にグロムス腫瘍を疑って手術を行い,術後に中耳腺腫と診断された1例を経験したので文献的考察を加え報告する。症例は67歳女性。右難聴,拍動性耳鳴を主訴に鼓室内腫瘤が疑われ当科を紹介受診した。鼓膜から透見される赤色拍動性腫瘤を認めた。CT,MRIにて鼓室内に強い造影効果を呈する腫瘤を認め,グロムス腫瘍が疑われた。手術前日に血管塞栓術を行い,腫瘍を摘出した。術後病理検査で中耳腺腫と診断された。現在再発なく経過観察中である。