抄録
中下咽頭癌に対する経口的切除術は外切開の術式と比べ低侵襲であり,機能温存・合併症・治療期間などの点で優れている。ただし,腫瘍制御の観点からは原発腫瘍のみではなく頸部リンパ節再発の制御も重要となる。重複癌の影響を考慮した症例選択と観察期間を定め,頸部リンパ節再発と関連する病理学的因子を検討した。その結果,中咽頭癌症例では頸部リンパ節再発と有意な関連を示す病理学的因子は認めなかったが,下咽頭癌症例では腫瘍の厚さが1.8mm以上の場合に頸部リンパ節再発と有意な関連を示した。中下咽頭癌ともにリンパ節再発は追加治療にて全例制御されている為,予防的な頸部郭清術を施行せず慎重に経過観察することも可能と考えられる。