頭頸部外科
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31 巻, 2 号
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原著
  • 山田 弘之, 福家 智仁, 金児 真美佳, 小林 大介, 澤 允洋, 平田 智也
    2021 年 31 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    片側反回神経麻痺は嗄声と誤嚥を引き起こし,患者のQOL低下につながる。麻痺の自然回復が期待できない症例では,反回神経の再神経化によって麻痺声帯の萎縮を改善し,かつ副正中位に移動させることが有効である。ただ再神経化による効果が表れるまでにはある程度の時間が必要である。披裂軟骨内転術と神経吻合を喉頭内の同一術野で行うことで,症状の早期軽減と,再神経化による更なる症状回復を目的とした。10例の陳旧性片側反回神経麻痺に対してこの手術を行い,全例において術直後のMPT延長が得られた。7か月以上経過した頃には,更なるMPT延長が認められ,術前のMPTとの間にはそれぞれ有意差を認めた。GRBAS評価では,G・B項目が術直後には有意差をもって数値軽減を認め,7か月以上経過時には更に改善を認めた。本手技は,従来の神経再建術に欠落していた即効性を加味した点で,神経再建術単独よりも恩恵が得られるものと考える。
  • 小栗 恵介, 西川 大輔, 鈴木 秀典, 小出 悠介, 別府 慎太郎, 澤部 倫, 寺田 星乃, 西川 大祐, 佐々木 英一, 花井 信広
    2021 年 31 巻 2 号 p. 125-133
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    中下咽頭癌に対する経口的切除術は外切開の術式と比べ低侵襲であり,機能温存・合併症・治療期間などの点で優れている。ただし,腫瘍制御の観点からは原発腫瘍のみではなく頸部リンパ節再発の制御も重要となる。重複癌の影響を考慮した症例選択と観察期間を定め,頸部リンパ節再発と関連する病理学的因子を検討した。その結果,中咽頭癌症例では頸部リンパ節再発と有意な関連を示す病理学的因子は認めなかったが,下咽頭癌症例では腫瘍の厚さが1.8mm以上の場合に頸部リンパ節再発と有意な関連を示した。中下咽頭癌ともにリンパ節再発は追加治療にて全例制御されている為,予防的な頸部郭清術を施行せず慎重に経過観察することも可能と考えられる。
  • 杉浦 文康, 横川 泰三, 佐藤 宏紀, 小崎 真也, 吉村 理
    2021 年 31 巻 2 号 p. 135-140
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    原発性副甲状腺機能亢進症手術において術中迅速副甲状腺ホルモンintact PTH(iPTH)測定を行う事で,腫大腺遺残の有無を術中に確認できると考えられている。この度われわれは原発性副甲状腺機能亢進症手術について,後方視的に検討した。2008年4月から2018年9月までに手術施行した原発性副甲状腺機能亢進症は136例であり,当院で術中迅速iPTH測定が可能となった2014年4月を境に2群に分類した。結果,術中iPTH測定を施行した群の方が,術後再発が有意に低いとの結果を得た。当科検討では,術中迅速iPTH測定が腫大腺遺残の有無判断に有用であるという,これまでの報告を支持する結果であったと考える。
  • 水本 結, 齊藤 祐毅, 坂井 利彦, 福岡 修, 安藤 瑞生, 山岨 達也
    2021 年 31 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    【背景】頭頸部癌患者には重複癌が生じやすく頭頸部領域と上部消化管の重点的検索が必要であるが,口腔癌に限った重複癌部位と年齢等のリスク因子に関する報告は少ない。
    【方法】当院で加療した口腔癌患者155人を対象とした後ろ向き観察研究。
    【結果】同時性重複癌11例,異時性重複癌39例,同時性かつ異時性重複癌3例を認めた。重複癌のリスク因子は,同時性ではPack-year 25以上,異時性では67歳以上とPack-year 37以上であった。若年または非喫煙者の上部消化管に生じた異時性重複癌は3例と少なかった。
    【結語】60歳未満または非喫煙者においては,上部消化管内視鏡による食道癌,胃癌の指摘率は少なかった。
  • 山本 圭佑, 黒瀬 誠, 垣内 晃人, 角木 拓也, 髙橋 亜由美, 小幡 和史, 大國 毅, 近藤 敦, 高野 賢一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍に対する切開アプローチはS字状皮膚切開(modified Blair incision:MBI)が主流であるが,術後の審美性への配慮からmodified facelift incision(mFLI)やretroauricular hairline incision(RAHI)のほか,より小さな切開線であるV-shaped incision(VSI)などが報告されている。今回われわれはVSIの紹介を行うとともに,MBIとmFLI,RAHI,VSIの合併症や適応,患者満足度の検討を行った。
  • 木田 渉, 中屋 宗雄, 野内 舞, 伊東 明子, 稲吉 康比呂
    2021 年 31 巻 2 号 p. 157-161
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    2012年1月-2019年12月に耳下腺病変に手術を施行した224例を検討した。良性病変192例,悪性腫瘍32例であった。悪性腫瘍の良悪性正診率は高悪性症例で75.0%,低中悪性症例で27.3%であった。良性病変の顔面神経へのアプローチは中枢アプローチ130例,末梢アプローチ56例で,術後顔面神経麻痺は25.0%であった。末梢アプローチは中枢アプローチと比べて,手術時間と術後入院日数が有意差をもって短く,術後顔面神経麻痺の出現率が高い結果となったが有意差は認められなかった。また末梢アプローチで術後顔面神経麻痺は全症例で治癒した。病変の局在でアプローチ方法を選択することは有用と考えられた。
  • 川嶋 麻里, 齊藤 祐毅, 坂井 利彦, 福岡 修, 明石 健, 吉田 昌史, 安藤 瑞生, 山岨 達也
    2021 年 31 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    2013年4月から2017年12月に当科でシスプラチン(CDDP)併用根治的化学放射線療法を施行した頭頸部癌症例計49例において,胃瘻栄養の必要性と治療効果について後方視的に検討した。経管栄養を使用した症例は計30例であった。喉頭癌では咽頭癌と比較して経管栄養使用率が低く,また経管栄養使用の有無と治療成績およびCDDP積算量との間に有意な相関は認められなかった。頸部リンパ節転移がなく予防的頸部照射のみの症例においても経管栄養使用率は低かった。治療前体重が64kg未満の症例で経管栄養使用例が多く,治療前体重64kg未満の症例において経管栄養の使用が治療中の体重低下を予防する傾向が見られた。
症例
  • 上野 貴雄, 遠藤 一平, 中沢 僚太郎, 吉崎 智一
    2021 年 31 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    頭蓋底骨髄炎は,外耳道以外にも,中耳,副鼻腔などからの感染波及により生じ,悪性腫瘍との鑑別が問題になる。今回,われわれは上咽頭悪性腫瘍が疑われ鼻内視鏡下上咽頭切除にて判明した頭蓋底骨髄炎の1例を経験した。当院受診時は,感染所見を認めず,悪性腫瘍が疑われたが,鼻内視鏡下上咽頭切除にて上咽頭深部に膿汁を認め,緑膿菌が検出された。半年前の中耳炎の起炎菌と一致し,中耳緑膿菌感染が原因と考えられた。斜台部の骨破壊を認めた場合には,過去の感染歴や,わずかな炎症反応にも注意を払う必要がある。鼻内視鏡下上咽頭切除術にて病巣の広範囲切除,深部病巣からの培養や術後の監視培養が可能であった。
  • 岡崎 慎一, 小池 修治, 二井 一則, 吉田 祥徳, 鎌田 恭平, 塩水 紀香, 深瀬 諒, 古瀬 秀和, 齊藤 史明, 欠畑 誠治
    2021 年 31 巻 2 号 p. 177-183
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    甲状腺髄様癌(MTC)が疑われる患者の術前検査でFNACが行われ,またカルシトニンとCEAの測定も行われる。加えて,米国と日本のMTCガイドラインでは,MTCの1/3がRET遺伝子変異を伴う遺伝性であり,術前に遺伝子検査を行い散発性か遺伝性かを確定することが推奨される。散発性MTCでは片葉切除も可能だが,遺伝性MTCでは頸部郭清を含めた甲状腺全摘出を行う必要がある。今回当科で加療を行いMTCの診断となった4症例について,RET遺伝子検査を含む治療経過を報告する。RET遺伝子検査を行った症例の経過より,MTCと診断された患者の術式を決定するために,術前検査としてRET遺伝子検査は有用である。
  • 髙橋 さとか, 島田 ディアス 茉莉, 川田 和己, 天野 雄介, 金澤 丈治, 西野 宏
    2021 年 31 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    浸潤型副鼻腔真菌症は難治性の疾患である。今回,眼窩内容摘出を行った浸潤型副鼻腔真菌症例を報告した。症例は73歳の男性。左視力低下と頭痛を主訴に当科初診。左中鼻道のポリープと著しい視力低下を認めた。CTでは副鼻腔炎と眼窩内側壁の骨欠損を認め造影MRIでは副鼻腔から視神経を含む眼窩尖端部まで病変が及んでいた。β-Dグルカンが高値であり,生検でアスペルギルス様菌糸の増殖を認めた。抗真菌薬の点滴静注を開始したが,視力不変であり頭痛が悪化したため眼窩内容摘出術と副鼻腔手術を施行した。術後,抗真菌薬の投与を継続しているが感染再燃を認めない。視神経や眼窩尖端部に病変を認め視力回復が期待できない症例では眼窩内容の郭清も考慮すべきである。
  • 進 保朗, 御厨 剛史, 関 正大, 徳渕 市朗, 島松 一秀, 梅野 博仁
    2021 年 31 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    Tc-99m-methoxy-isobutyl-isonitrile(MIBI)シンチグラフィで取り込みのない巨大な機能性副甲状腺囊胞の1例を報告する。症例:74歳女性。口渇や全身倦怠感を自覚し,高Ca血症,int-PTHの高値を指摘され受診した。単純CT検査,頸部エコー検査で,右頸部に囊胞性の腫瘤を,左頸部甲状腺内とその背側に充実性の腫瘤を認めた。右頸部囊胞内容液中のint-PTHは高値であったが,MIBIシンチでは左頸部に異常集積を認め,同部位の摘出手術を行った。永久病理標本にて右機能性副甲状腺囊胞,左腺腫様甲状腺腫,左副甲状腺過形成と診断した。術後1年を経過したものの経過は良好である。
  • 山内 一崇, 工藤 直美, 三橋 友里, 松原 篤
    2021 年 31 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    血友病患者の手術では周術期の凝固因子補充が重要である。今回われわれは血友病Bと診断された睡眠時無呼吸症候群症例に対して口蓋扁桃摘出術,舌扁桃切除術を行った経験について報告する。症例は52歳男性。20年来の無呼吸症状があり,前医で高度の睡眠時無呼吸症候群と診断された。口蓋扁桃と舌扁桃の著明な腫大を指摘され,手術を希望し当科に紹介された。血友病Bに加えて抗血小板薬を内服しており保存療法を繰り返し勧めたが本人の強い希望により手術を行った。予防的気管切開術も行い,周術期には第Ⅸ因子製剤を投与した。術後一時的に出血を認めたが,第Ⅸ因子製剤を増量し止血を得た。術後自覚症状は消失し,検査でも改善が見られた。
  • 三ッ井 瑞季, 松見 文晶, 室野 重之
    2021 年 31 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    放線菌症は口腔内常在菌であるActinomyces属によって引き起こされ,頭頸部に好発するが,副鼻腔放線菌症の報告は少ない。今回われわれは稀な篩骨洞放線菌症の1例を経験したので報告する。症例は81歳女性。主訴は右鼻閉と鼻漏。臨床経過と画像所見から副鼻腔真菌症を疑い,内視鏡下副鼻腔手術を施行した。特徴的病理所見から副鼻腔放線菌症と診断した。術後はアモキシシリンを8週間投与し,13か月の経過観察を行い再燃は認めなかった。放線菌症ではペニシリンの高用量,長期投与が推奨されるが,副鼻腔放線菌症においては,外科的治療が有効で,病変切除の程度に応じて抗菌薬治療は短縮できると考えられた。
  • 野内 舞, 中屋 宗雄, 松本 尚之, 北條 裕子, 木田 渉, 稲吉 康比呂, 岩村 均
    2021 年 31 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは妊娠中に急速進行した甲状腺濾胞癌遠隔転移例を経験したので報告する。症例は46歳女性。甲状腺濾胞癌遠隔転移に対し,放射性ヨウ素治療中であった。病状進行の可能性があったが,挙児希望があり,不妊治療を経て妊娠に至った。無事,健康な女児を出産したが,妊娠中,原病は急速に進行し,ADLは低下した。適切に治療されている進行分化型甲状腺癌であれば,妊娠は禁忌とはならないが,妊娠に伴うホルモン変化の影響で急速に進行する可能性があることを認識しておく必要があると考えられた。
  • 安塚 孝治, 井田 翔太, 矢島 雄太郎, 紫野 正人, 新國 摂, 近松 一朗
    2021 年 31 巻 2 号 p. 215-222
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー
    頭頸部原発の神経内分泌腫瘍は再発・転移を生じやすい。その病理学的分類についても多くの議論がある。当科で経験した喉頭蓋原発神経内分泌腫瘍の2症例について,病理学的分類と文献的考察を含めて報告する。
    症例1:67歳男性。喉頭癌(T1N0M0 低分化腺癌)の診断で喉頭水平部分切除術を施行し,術後病理標本は神経内分泌腫瘍Grade 2と診断された。切除断端は陰性であったが後発転移を繰り返し,初回治療後1年6か月で死亡した。
    症例2:80歳男性。喉頭癌(T2N0M0 神経内分泌癌)に対して喉頭全摘術を施行した。術後2年4か月で左頸部リンパ節に後発転移を認めたが,高齢のため追加治療は行っていない。
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