抄録
血友病患者の手術では周術期の凝固因子補充が重要である。今回われわれは血友病Bと診断された睡眠時無呼吸症候群症例に対して口蓋扁桃摘出術,舌扁桃切除術を行った経験について報告する。症例は52歳男性。20年来の無呼吸症状があり,前医で高度の睡眠時無呼吸症候群と診断された。口蓋扁桃と舌扁桃の著明な腫大を指摘され,手術を希望し当科に紹介された。血友病Bに加えて抗血小板薬を内服しており保存療法を繰り返し勧めたが本人の強い希望により手術を行った。予防的気管切開術も行い,周術期には第Ⅸ因子製剤を投与した。術後一時的に出血を認めたが,第Ⅸ因子製剤を増量し止血を得た。術後自覚症状は消失し,検査でも改善が見られた。