抄録
上歯肉,硬口蓋腫瘍に対する外科的切除は口腔と鼻副鼻腔が交通することにより咀嚼,嚥下,構音障害といった機能障害をきたすため,顎義歯の作成や皮弁再建などの機能再建が必要となる場合が多い。今回,われわれは硬口蓋発生の粘膜悪性黒色腫に対し,鼻腔粘膜を温存することで機能障害を残さず治癒した1例を経験した。骨浸潤のない粘膜悪性黒色腫cT3N0M0の診断で手術加療を行った。手術では内視鏡下に鼻中隔,鼻腔底粘膜を温存し,口蓋粘膜と上顎骨,口蓋骨,鋤骨を一塊に切除し,鼻腔粘膜を裏打ちとしてMCFP(Mucosal defect Covered with Fibrin glue and Polyglycolic acid sheet)法を施行した。皮弁再建や顎義歯を使用せず機能障害なく回復が可能であった。