頭頸部外科
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32 巻, 2 号
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企画演題
  • 高林 宏輔
    2022 年 32 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    眼窩吹き抜け骨折の治療は,初療医から治療医への紹介,受傷から手術までの期間,手術アプローチ法と複数の最適化すべき段階が存在する。初療医は実際に手術を行わないが,治療医への紹介の段階,さらには受傷から手術までの期間に関わることとなり,治療医は手術の時期や手術アプローチ法を決定する。特に緊急手術を要する病態では時間的要素が重要であり,初療医から治療医への速やかな紹介が後遺障害の残存のリスクを減じる。各段階いずれが最適化されても,眼窩吹き抜け骨折の治療成績は向上しうる。本総説では最適な診療連携,最適な手術時期,手術アプローチ法について共有し,眼窩吹き抜け骨折診療を最適化したい。
  • 辻川 敬裕, 木村 有佐, 森本 寛基, 佐分利 純代, 光田 順一, 吉村 佳奈子, 森 大地, 大村 学, 椋代 茂之, 杉山 庸一郎, ...
    2022 年 32 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    生命・機能予後の改善をめざし,口腔癌を含む局所進行頭頸部癌に対する導入化学療法・免疫療法を検証する臨床試験が国内外で複数進行している。1切片から14マーカーを可視化・定量化可能な多重免疫染色により,頭頸部癌においてリンパ球系優位,低免疫細胞,骨髄系優位の3種類の免疫特性の存在が示され,これらの免疫特性が免疫療法のみでなく,導入化学療法の効果と関連することが示唆された。免疫特性をふくむ組織バイオマーカーに基づいて適切な症例選択が可能になれば,口腔癌における将来的な導入化学・免疫療法や術式を含む治療方針の最適化が期待される。
  • 松本 希
    2022 年 32 巻 2 号 p. 121-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    本稿では,人工内耳手術を執刀する後輩医師に日頃指導していることを,筆者が重要と考えている順に4点紹介する。手術時間を競わないこと,患者より先に手術室に入ること,罠を張るような紛らわしい指示を出さないこと,そして人工内耳手術においては蝸牛の基底回転が上っていく向きまで予習をした上で手術に臨むことが,普通の人工内耳手術を普通に終わらせ続けるためのリスク管理として有効である。
原著
  • 濱口 宣子, 石永 一, 千代延 和貴, 竹内 万彦
    2022 年 32 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌遠隔転移例の治療には手術,放射線,化学療法があるがその治療内容に関するコンセンサスは得られていない。頭頸部扁平上皮癌遠隔転移病変に対する治療群を手術加療,非手術加療に分類し治療成績を検討した。1年および3年生存率は手術加療群で100%,86.4%,非手術加療群で88.9%,19.2%であった。手術加療群は予後良好であり,また特記すべき合併症も認めなかった。原発巣の制御,転移巣が切除可能な病変,かつ比較的全身状態が良好であることが手術を施行する上での前提ではあるが,外科的切除は安全に施術可能であり,予後の改善に寄与する可能性が示された。治療法の進歩に伴い遠隔転移には集学的治療の重要性が増しており病勢を考慮した治療方針の提案が必要であると考えられた。
  • 塚原 奈々, 松本 信, 島 嘉秀, 足立 将大, 中山 雅博, 上前泊 功, 田渕 経司
    2022 年 32 巻 2 号 p. 131-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    2006年から2019年に当科で初回治療を行った喉頭扁平上皮癌T3N0M0症例53例の検討を行った。治療法は喉頭全摘術26例,化学放射線療法(CRT)17例,放射線単独療法(RT)10例であり,3年疾患特異的生存率は84.4%であった。3年喉頭温存率は,全体で37.3%,RT群で48%,CRT群で81.6%と,CRT群で有意に良好な成績であった。治療別/亜部位別の3年粗生存率は,手術群/CRT群/RT群は82.2%/94.1%/48%であり,声門上癌/声門癌/声門下癌は60%/82.9%/100%であった。今後,化学療法が併用できない症例の治療法や声門上癌の治療成績向上が検討課題であると考えられた。
  • 佐藤 公宣, 小野 剛治, 栗田 卓, 末吉 慎太郎, 深堀 光緒子, 佐藤 文彦, 千年 俊一, 梅野 博仁
    2022 年 32 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    当科で手術を行った下歯肉扁平上皮癌28例を臨床病理学的に検討した。
    全症例の5年粗生存率(OS),無病生存率(DFS),疾患特異的生存率(DSS)はそれぞれ68%,54%,80%であった。
    5年疾患特異的生存においてpT4群はpT1/pT2/pT3群と比較して予後不良であった(p<0.05)。頸部郭清術を併用した症例(n=23)の疾患特異的生存率はpN(−)群:92%,pN(+)群:67%であり統計学的に有意差を認めなかった(p=0.20)。
    pT4症例の予後は不良であり,5例中3例が局所再発で死亡していた。治療成績を向上させるため,手術に加え術後補助療法を検討する必要があると考えた。
症例
  • 徳重 豪士, 花牟禮 豊, 積山 幸祐, 山下 勝
    2022 年 32 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    甲状舌管囊胞に由来する悪性腫瘍は約1%と稀で,多くは乳頭癌であり扁平上皮癌は約5%と更に稀である。われわれは喉頭全摘術を要した甲状舌管囊胞に由来すると考えられた扁平上皮癌症例を経験した。症例は69歳女性,嗄声とオトガイ下部の腫脹,圧痛が出現した。造影CT,MRI検査上甲状舌管囊胞の破綻や腫瘍性病変が疑われた。穿刺吸引細胞診検査と組織試験採取から扁平上皮癌の診断となり甲状舌管囊胞由来の扁平上皮癌と考えられた。腫瘍は喉頭に浸潤しており喉頭全摘術を含めた前頸部悪性腫瘍摘出術を行った。甲状舌管囊胞に由来する扁平上皮癌ではSistrunk法のみでは不十分であり喉頭全摘術を要する症例があることを示した。
  • 川浦 僚, 若岡 敬紀, 堀 倫也, 歌方 諒, 近藤 大恵, 髙木 千晶, 大西 将美
    2022 年 32 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    術前に高カルシウム(Ca)血症が明らかではなかった副甲状腺癌症例を経験したので報告する。症例は73歳女性。透析導入期の加療目的に当院腎臓内科を紹介受診し,経過中にintact PTH高値と左副甲状腺腫を指摘され手術目的で当科紹介となった。既にシナカルセトが導入されており高Ca血症を認めなかったが,左上皮小体摘出術を実施し,副甲状腺癌の病理診断であった。従来,高Ca血症は副甲状腺癌を疑う所見のひとつであるが,本症例では高Ca血症の悪化を来す前にCa受容体作動薬による内服治療が開始されており顕在化しなかった。われわれ頭頸部外科医も内科的治療への理解を深める必要がある。
  • 嶋根 俊和, 江川 峻哉, 北嶋 達也, 溝上 雄大, 丸山 祐樹, 平野 康次郎
    2022 年 32 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    数珠状に腫瘤形成し,全長18cmに達した迷走神経鞘腫を経験したので報告する。症例は31歳,男性。主訴は左頸部腫瘤。現病歴は4年前,左頸部に腫瘤を自覚し精査をしたところ,神経鞘腫が疑われ経過観察の方針となった。腫瘍は次第に増大し,頭側は第1〜2頸椎から尾側は上縦隔までの大きさになったため被膜間摘出術を行ったが,腫瘍同士の連続部位の剥離が難しく,術後に喉頭麻痺が発生した。
    頭頸部領域での数珠状に発生した神経鞘腫は極めて稀で,摘出には全摘出術が容易ではあるが,本腫瘍が基本的に良性腫瘍である観点から,術後の神経機能温存を目指し被膜間摘出術を行うことも選択肢のひとつになるのではないかと考えられた。
  • 山口 裕貴, 岡村 純, 望月 大極, 今井 篤志, 池羽 宇宙, 竹内 一隆, 山田 智史, 疋田 由美子, 瀧澤 義徳, 細川 誠二, ...
    2022 年 32 巻 2 号 p. 165-172
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    副耳下腺悪性腫瘍の報告は少なく,副耳下腺原発の唾液腺導管癌(salivary duct carcinoma:以下SDC)の報告例はさらに少ない。今回われわれは副耳下腺より発生したSDCを3例経験したため文献的考察を加え報告する。
    3例全例で術前顔面神経麻痺はなかったが,全例顔面神経頰筋枝の合併切除を要した。2例で後発頸部リンパ節転移に対して頸部郭清術を施行し,切除断端近接または転移リンパ節に節外浸潤のあった2例に対して術後放射線治療を行った。3例全例で原発巣および頸部は制御されたが,2例に遠隔転移を認めた。副耳下腺原発のSDC症例の報告数は少なく,今後の治療方針の検討が必要と考えられた。
  • 武山 雄貴, 福本 一郎, 米倉 修二, 山﨑 一樹, 飯沼 智久, 木下 崇, 三田 恭義, 松葉 義大, 白石 健悟, 森 昂生, 根本 ...
    2022 年 32 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    外耳道に発生する悪性腫瘍は極めて稀な疾患である。われわれは2例の外耳道腺様囊胞癌を経験したので報告する。1例目は81歳男性,他院で右外耳道腫瘤摘出後に腺様囊胞癌断端陽性の診断となり,追加切除目的に当院紹介となった。肺結核の既往があり呼吸機能低下から全身麻酔が不可能と判断し,局所麻酔下で側頭骨部分切除術を施行した。永久病理検査で断端陰性,術後15か月時点で局所再発は認めていない。2例目は69歳男性,左耳痛を主訴に当科紹介となった。左外耳道内に充満する腫瘤を認め,生検にて左外耳道腺様囊胞癌と診断,全身麻酔下で側頭骨外側切除術を施行した。永久病理検査で断端陰性,術後12か月時点で局所再発は認めていない。
  • 丸山 祐樹, 徳留 卓俊, 油井 健史, 嶋根 俊和
    2022 年 32 巻 2 号 p. 179-184
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    日常診療において口蓋扁桃に発生する悪性腫瘍のほとんどが原発性腫瘍であり転移性腫瘍はまれである。今回われわれは,口蓋扁桃に転移した肝細胞癌の1例を経験した。症例は80歳男性。口腔内からの持続する出血を主訴に来院した。初診時右口蓋扁桃に白苔が付着した腫瘍性病変を認めた。確定診断目的に右口蓋扁桃摘出術を施行したところ,病理組織学的所見で異型細胞が索状構造を呈しており,肝細胞癌の転移が疑われた。原発精査目的でFDG-PET-CT検査を施行し肝左葉に集積を認め,消化器外科で肝部分切除術を施行したところ,肝細胞癌(pT2N0M1)と診断された。現在,口蓋扁桃以外に明らかな転移がないため経過観察中である。
  • 佐藤 悠歩, 東 賢二郎, 石井 亮, 中山 勇樹, 中目 亜矢子, 大越 明, 香取 幸夫
    2022 年 32 巻 2 号 p. 185-190
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    上咽頭癌の局所再発や二次癌に対する救済治療として手術が選択肢となるが,解剖学的理由から安全域の確保,腫瘍へのアプローチが課題となる。今回われわれは上咽頭癌に対する化学放射線治療の14年後に生じた放射線誘発肉腫を経験した。腫瘍は上咽頭後上壁に基部を有し,下顎正中離断・軟口蓋離断を併施した経口蓋アプローチ法に経鼻内視鏡を併用して切除を行った。内視鏡や鉗子類,電気メスそれぞれを術野に応じて経鼻・経口腔の2経路のよりよい方から挿入することで,良好な視野と操作性が得られ容易かつ安全な切除が可能となった。本邦では上咽頭悪性腫瘍の外科的切除の報告は少なく,本術式は上咽頭への有用なアプローチのひとつと考えられた。
  • 山﨑 慎太郎, 西谷 友樹雄, 阿久津 泰伴, 黒栁 拓樹, 長岡 真人, 志村 英二
    2022 年 32 巻 2 号 p. 191-196
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    上歯肉,硬口蓋腫瘍に対する外科的切除は口腔と鼻副鼻腔が交通することにより咀嚼,嚥下,構音障害といった機能障害をきたすため,顎義歯の作成や皮弁再建などの機能再建が必要となる場合が多い。今回,われわれは硬口蓋発生の粘膜悪性黒色腫に対し,鼻腔粘膜を温存することで機能障害を残さず治癒した1例を経験した。骨浸潤のない粘膜悪性黒色腫cT3N0M0の診断で手術加療を行った。手術では内視鏡下に鼻中隔,鼻腔底粘膜を温存し,口蓋粘膜と上顎骨,口蓋骨,鋤骨を一塊に切除し,鼻腔粘膜を裏打ちとしてMCFP(Mucosal defect Covered with Fibrin glue and Polyglycolic acid sheet)法を施行した。皮弁再建や顎義歯を使用せず機能障害なく回復が可能であった。
  • 池田 葵, 杉山 庸一郎, 光田 順一, 新井 啓仁, 森本 寛基, 木村 有佐, 吉村 佳奈子, 佐分利 純代, 大村 学, 辻川 敬裕, ...
    2022 年 32 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は26歳男性,前頸部腫脹を自覚し初診。MRIでflow voidを認め動静脈奇形(AVM)が疑われた。病変は甲状腺左葉から頭側に進展,喉頭内に進入し上喉頭動脈と連続していた。手術2日前に血管造影・動脈塞栓術を施行,病変は上,下甲状腺動脈,上喉頭動脈により栄養されていたが,手術時の出血リスクを減少させるため下甲状腺動脈のみを塞栓した。その他の流入血管を結紮後,甲状腺左葉を含むAVM摘出術を施行した。甲状軟骨板の一部を一旦切除し,喉頭内に進展する病変を追跡,摘出した。下喉頭神経は神経刺激装置で手術終了時まで反応を確認し温存した。術直後は一時的な声帯固定を認めたが,手術4か月後に声帯の可動性は回復した。
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