抄録
左頸動脈浸潤を来たした甲状腺癌症例に頸動脈の切除再建を行った。術前に患側の頬骨弓上にバーホールを開け,経頭蓋骨的超音波ドプラ法の音響窓として,頸動脈遮断試験を行った。側副血行は良好であったが,hemodynamicな観点から再建を行った。甲状腺全摘,喉頭全摘,咽頭部分切除両頸部郭清術,左総頸内頸動脈合併切除を行い,さらに大伏在静脈グラフトを用いた右外頸―左内頸動脈バイパス術を施行した。脳血流監視装置(INVOS4100)は血行状態をリアルタイムに評価でき,有用であった。患者は片麻痺などの重大な中枢神経障害を起こすことなく,現在まで再発転移なく経過している。