抄録
鼻副鼻腔に生じる転移性腫瘍の頻度は低く,また手術による予後改善が期待できないことが多いため手術適応となる頻度はさらに低い。今回,腎細胞癌に対し根治的左腎全摘出術を施行後8年の経過で右前筋骨洞に転移した症例に対し,根治を目的として転移巣摘出を施行した症例を経験した。症例は67歳男性。MRI上,右前節骨洞を中心に右前節骨洞天蓋への浸潤,右眼窩内側壁紙様板の破壊を伴う腫瘍性病変を認めた。同部位の転移巣に対して2度摘出術が施行された後の再発に対する手術であったため,完全切除可能なアプローチとして頭蓋内外からの複合アプローチでの前頭蓋底手術を選択した。術後1年6ヶ月経過し再発なく経過良好である。